私は――そう、声を大にして言いたい。
「私は他人が茹でたブロッコリーが食べられない。」
いや、潔癖でもグルメでもない。ただ、私には忘れられない“事件”があるのだ。
それはまだ私がキッチンの支配権を握っていなかった、遠い昔のこと。
その日、母がご近所さんからもらったブロッコリーを鍋に放り込み、フツフツと茹でていた。
食卓に並んだそれは、まるで新緑の森のように美しく、輝いていた。
私はブロッコリーが好きだった。いや、愛していたと言ってもいい。
だが――その瞬間、愛は裏切られた。
箸でブロッコリーを持ち上げた瞬間、私は見てしまったのだ。
そのモフモフの森の隙間から…青き肥満虫、つまり青虫様が、
**「ようこそ我が領土へ」**と言わんばかりに顔を覗かせていたのだ!!
\ギャアアアアアアア!!!!!/
その叫び声は、今も近所の犬がたまに反応するほどの衝撃だったらしい。
それ以来、私は決意した。
ブロッコリーを信じるには、己の目で確認するしかないと。
以降、我が家ではブロッコリー担当=私となり、母も黙って任せるようになった。
だから私はこう言う。
「私は他人が茹でたブロッコリーが食べられない。」
これは偏見ではない、戦いの歴史なのだ。
そして今夜も私は、茹でる。
ブロッコリーの影にひそむ青き恐怖と戦うために――。