少し悩んでた作品。DQXと蒼天のソウラをネタにした二次創作です。
13巻の続き74話が無料で読める!まで読んで書いたよ。
そんなあの日の前夜に、ただ会話しただけ。そんなお話。
例によって登場しているカルラさんのキャラクター性、セリフ等は
勝手に想像したものです! ごめんね!
(キャラ的にNG!!とかあればご指摘ください。修正やお蔵入りします!)
◆◆◆その前夜◆◆◆
「うう、ダメだ。宴会場にいては、の、呑んでしまう」
最前線の死地に似合わぬ程の、明るいどんちゃん騒ぎを背にして、ワッサンは外へと向かう。
夜の闇。輝く月と星。揺らめく松明の心地よくはぜる音。
あまりの対極に、ドワーフの大きな眼は夜の素晴らしさに見入ってしまう。
(美しさは、いつだって奥深く、そのくせ気づけばそこにあったりする)
その境地を体現できるのはいつになるだろうか。そんな思索に入り込みながら、目的もなく歩を進める。
一人二人と見張りの者と挨拶を交わし、気が付けば物見櫓を除いては、陣地で一番夜空が近い場所へとやって来ていた。
ふと、闇の中の闇に目が留まる。
カルラであった。
団長シャクラのお庭番として陰に日向に働く寡黙な男。
というのが彼に持つイメージであったが、同時にもう一つ抱いていたイメージがある。
宴会のようにシャクラが気を抜いている時には、油断なくそばに控えている懐刀。
そんな彼が、一人このような場所で杯を傾けているのは、一種の衝撃だったのだ。
「ボクはお酒を控えたはずなのに…幻覚を見てるのか」
まじまじと自分を見つめる仲間の言葉に、カルラは顔の向きを変える。
「そちらこそ、踊りもせず酒宴を外れてこのような場所までとは珍しい」
「ふ、時には深く思索し、内面と向き合うことも美しさを洗練する術なのだよ」
にやりと格好をつけて笑うドワーフに、カルラはなるほどと頷く。
「確かに。時に立ち止まり、物思う時間は愛おしいのかもしれんな」
仮面と夜の帳がエルフの美丈夫の表情を隠し、ワッサンは真意を量りかねる。
が、それならそれで話してみるのも面白いと、カルラの隣にどっかりと腰を落ち着ける。
「何か悩んでるとかなのかい?」
「そんなふうに見えるとは驚いた。そのような大層なことではないぞ。そうだな…今考えていたのは新人の彼に、我らは、団長はどんなふうに見えているのか?とかかな」
酒の肴にするように、するりと供されたソウラの話題にワッサンは笑みを浮かべる。
「手本になる、参考になるとずいぶん、買ってくれているようだ。ともに訓練などをすると、こちらもソウラの根の素直さと粘り強さには感心するがね」
付け加えるなら熱心さと成長速度にも驚くとワッサンは饒舌に語る。
「貴殿も、殿と同様にずいぶん、ソウラの事を買っているようだな」
カルラに指摘され、気恥ずかしさと対抗心から、とはいえまだまだ粗削りだがな!と付け加えるドワーフの顔を眺め、カルラはふむと頷いた。
「一人で何かに納得するのはやめた方がいいぞ」
恨みがましい視線を向けて、抗議するワッサンにカルラの口元がほほ笑む。
「貴殿と話していて、ただ期待し、楽しむのも…確かに一興なのかもしれんと思えたのでな」
少年の男の目にどっかと期待をした自らの主の言葉が、すとんと胸に落ち着いた気がして、カルラはこの乾き過ぎた夜風すら、心地よく感じていた。
「ふ、今日は、いい夜なのかもしれん」
こくりと杯を傾け喉を鳴らすカルラの姿はどこか晴れやかだ。
「……ところでカルラ」
「なんだワッサン?」
「その酒…一口くれないか?」
結局我慢できずに問うドワーフに、エルフは口の端を少し上げる。
「酒はやれんぞ」
「く、今夜は結構仲良くなれただろう! そのよしみで!」
「いや、そもそもこれは“水”だ。有事に備えてな」
嘘だろう!? 夜のしじまにドワーフの大声が響き、カルラは面白そうに笑うのだった。
※お館様って本人に呼びかける時以外にも使うのだろうか。使わない気がしてるんだが今回は調べきれなかった。