プレイヤーイベントに参加して、刺激をいただいたからか
すこーんと降って湧いたネタ。
とうとう自分のキャラは欠片も出てないという事にw
相変わらずのDQX、蒼天のソウラの二次創作です。
例によって登場しているセレンさん、ダイクェーラさん、某ドワ少女の
キャラクター性、セリフ、心情等はすべて勝手に想像したものです!
(キャラ的にNG!!とかあれば修正なりお話のお蔵入りなりします!)
◆◆◆お台所では色々作られます◆◆◆
「もぉーッ! もーぉーッ! ほんとにもぉ───!!」
その日<真の太陽>の陣地内、お台所には牛がいた。
いや、このようにやさしく、可愛らしく、怒って鳴く牛など、この世にはいない。
声の主は、この台所の主の一人、ウェディのセレン(年齢不詳)であった。
その手にはサラダボウルが、盛り合わせも美しく花開いている。
偽りの太陽に焼かれ、激しい戦いを繰り広げるこの場所では、本当に貴重な一品が、手つかずのままに。
これを差し出されて拒否したとなれば、もはや肉食獣の生まれ変わりか何かとしか思えない。
「ゼタのやつ、結局最後まで手を付けなかったのか」
その様子に、やれやれと苦笑いを浮かべて入って来たのは空になった瓶を持ったダイクェーラだ。
瓶の中身、つまりはお酒で薄く頬を染めた色気のある顔に対して、その笑みはどこか子供っぽい。
「そうなのよ! 戦う事ばっかりで、こっちの苦労や気遣いなんて、気にもしてないんだから!」
多くの経験を持ちながら、戦いからは一線を引いたセレンは、その分戦士達の日常を支えるべく、奮闘している。
晩酌女王、微笑みのウワバミ製造機、杯を空にしない女神など、さまざまに呼ばれるダイクェーラは、食事時に細々と気配りをするセレンの姿をよく見ていたので、そのお怒りには心底同意する。
「でも、ゼタって本当にそういう事に気づかない鈍感じゃないんだよね?」
新たな酒を瓶に満たしながら、背中越しに問いかけるダイクェーラの言葉に、一時の沈黙が落ちる。
「そこが悔しくて、腹が立つのよ」
ゼタという男の中に巣くった復讐の業炎は、レイダメテスの火にも劣らぬほど燃え盛っている。
そして、セレンもそれをすべて否定したいわけではない。
ただ、ほんの少しの隙間を、余裕を持たせてあげたいのだ。
「我ながらおせっかいとは、思うんだけどねぇ」
はぁっとため息をついて、気持ちを整えるセレンに、ダイクェーラが小さな杯を手渡す。
その自然で、ほんの小さな気遣いを受け取ってセレンは喉を潤した。
「ちなみにゼタはこっちも、断り続けてるんだよねー。こうなってくると意地だよね? お互い必ず、食べさせて、飲ませて、美味いって言わせてやろう!」
酒の瓶をゆらゆらっと揺らしながら、ダイクェーラがにっこり、満面の笑みを作る。
「その共同戦線、乗った!」
セレンも同じく笑顔で応じる。
男たちの知らない台所での、小さな小さな大作戦が生まれた瞬間であった。
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ちなみに、男たちは知らなかったが、セレンの気遣いに師匠の代わりに礼を言いに来たドワ少女が、うっかり盗み聞きの形になって、二人の優しいやり取りに、ほろりと泣いちゃった事は、本人と小さな竜だけの秘密である。