寄り道は甘々の冒険者達の外伝ぽい感じよ
今週は突入部隊のエイダ様の妄想を書いたわ。
私個人の二次創作ですので、ご本人さん公認などでありませことよ。
問題がありましたら修正、削除の対応いたしますわ。
◆◆彼女のために!◆◆
スウィ~ト達はオルフェアの町に来ていた。
小さなモフモフとしたプクリポ達が多く住むここは、見ているだけで楽しい町だ。
有名なサーカス団のテントからは笑い声が絶えない。
各大陸でも愛好者の多いケキちゃん人形や、美味極まるアクロバットケーキ。
そして、駅を出てすぐ目の前の調理職人ギルド。
「ギルドマスター…いる?」
そんなギルドの扉を開けてアイシスはまっすぐ奥へと進む。
彼女もまたここで修業をした一人であり、ギルドマスター、ポシェルが真正面最奥のカウンターで笑っているのをよく知っていた。
「あれ?」
しかしラブとキュートを振りまくクッキング☆エンジェルの姿はそこにはない。
「いつもなら、いるはず…なのに?」
「いないのか。ここは名前に☆使用の特許についてハッキリさせておきたかったのに!」
アイシスの後ろから首を巡らせ、不在のカウンターにやれやれと大げさに肩をすくめるスウィ~ト。
「うーん、なんで?」
「あ、おい。なんかつっこめよ。こういう時だけスルーとかひどい!」
「あら? ポシェル様はしばらくお戻りになりませんわよ」
やいのやいのと言い始めた二人に気づき、少女が声をかける。
苺色の緩やかなウェーブの髪をポニーテールでまとめ、淑やかなドレスを着こなす美少女の姿に、二人は思わず真顔であった。
「驚かせてしまいましたかしら。ポシェル様をお探しのようでしたので、つい声を。私、エイダと申します」
無駄なく、それでいて柔らかい一礼を披露した少女にスウィ~ト達もぎこちなく頭を下げる。
「えっと、何か用事で出かけたってこと?」
「はい。毎年この時期はエスコーダ商会会長が愛娘のバースデーケーキの相談に来られていますの。今頃、その話で大盛り上がり中かと思われますわ」
エスコーダ商会といえば海運を主軸にした大商会だ。その愛娘の誕生日ケーキと聞いてスウィ~トの目の色が変わる。
「な、なんだって! それは大変だ!! すぐにボクも参加しなくっちゃ!!」
「いえ、あの。どちら様かは知りませんが、先ほどまでそれを知らなかった方がさすがに飛び入りは難しいのではないかと」
無理だと言わないところに優しさを感じながらアイシスは、ずびしとスウィ~トの脳天にチョップする。
「うごぉ!?」
「レシピの事、聞くのが先…ざらめも不安…かも?」
「おお! そういえばそうだ。調理ギルドのマスターならばと訪ねて来たんだっけ」
「完全…忘却? ひどいね…ざらめ」
ZZzz…。
「寝てる…図太い」
すっかりスウィ~トの頭上が定位置のざらめは、先ほどからぐっすりだ。
「なんだか楽しい方達ですわね」
「こっちこそ、わざわざ教えてくれてありがとう♪ ボクはスウィ~トスター☆、こっちはアイシスで、上のがざらめだよ」
くすりと笑うエイダに改めて礼を言うと、一つの疑問が湧きあがる。
「そういえばエイダは事情通みたいだけど、ギルドの人なの?」
「あ、いえ私、そういうわけではないのですが…」
先ほどまでの優雅さがほんの少しだけ崩れ、戸惑う様子が見られスウィ~トとアイシスが首を傾げた時だった。
「お嬢様! お待たせして申し訳ありません」
「ぷぎぅ! ぷぷっきー!! 」
(ブルベリーのチーズケーキ! こっそり聞いてきたけど、今年はこれで決まりましたエイダお嬢様ー!)
疾風の如く駆け込んできたのは、理知的な面差しでスーツを着こなしたウェディと、野性味あふれる姿のプクリポだった。
「でかしましたわ! これで今年はコンセプトがまる被りなどという悲劇は回避完了! 待っていなさいマルチナさん! その麗しき瞳を感動の涙で潤ませて差し上げますわ!!」
目の前に控えた二人の言葉(いや一名は言葉だったのだろうか?)にエイダが高笑いを上げて頬を紅潮させる。
「あ、あの…エイダさん」
ちょっぴりびっくりしたスウィ~トが遠慮がちに声をかけると、興奮冷めやらぬ顔のままエイダはしゅたっと右手を挙げて言い放つ。
「申し訳ありません。私、超急用が出来ましたので失礼しますわ!」
そのままスタスタと出口に向かうエイダに、ウェディの男性がリストをめくりながら季節のフルーツの名産地を告げている。
スウィ~トも知っているが、どの場所も一級品を扱っている場所だ。
「あー、これ。こっちについていっても、すごいケーキに出会えそう」
「めっ。ざらめの事、レシピの事、優先…」
「ですよねー」
諦めきれずに、指をくわえてエイダ達を見送るスウィ~トであった。