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トロける5000年

ワッサンボン

[ワッサンボン]

キャラID
: XG969-178
種 族
: ドワーフ
性 別
: 男
職 業
: 武闘家
レベル
: 122

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ワッサンボンの冒険日誌

2019-10-27 13:42:38.0 2019-11-10 14:10:33.0テーマ:その他

甘々の冒険者達『8話・幻の蜂蜜』(DQX二次創作)

DQXの二次創作小説。
独自解釈等ありますので苦手な方は退避で!
1話は2019/06/23の日誌から。


◆◆8話 幻の蜂蜜◆◆


「クエストを探しているなら、私を手伝ってみる気はない?」
 突然声をかけてきたのは柔和な笑顔のウェディ女性。
 ヴェリナードの名高き特殊部隊、魔法戦士団の制服の凛々しさとは対照的な親しみやすい物腰。

「お仕事は探してた…けど?」
「ボク達に声をかけるとは、なかなかお目が高いが…ずいぶんと唐突だね」
 その雰囲気に背を押されるように、スウィ~ト達も気軽に答える。

「一期一会、ノリと勢いは時に熟考にも勝るもの。冒険者ならそういう覚えもあるんじゃないっ?」
 どうやら彼女は宮仕えの生粋の軍人ではないらしい。
 経験から紡がれた言葉だと感じて、かしこまったやり取りは完全に投げ捨てる。

「ボクはスウィ~トスター☆ 菓子と幸せのために世界を巡る冒険者だよ! お嬢さん。キミのお手伝いは、この名に相応しいかい?」
 くるくるとペロリンステッキを回転させてからポーズを決めると、ざらめも自前の菓子で頭上に星形を描く。

「やー、これはまた見事だねぇ。そしてやはりこの出会いは運命だよ!」
 パチパチと決めポーズを褒めちぎり、彼女は名乗る。

「私は魔法戦士団のミャジ。メギトリス王国よりの依頼を受けて、マッドハニーを狙う悪漢を捕まえに来ちゃったのよ」
 ミャジと名乗った魔法戦士は、言葉とは裏腹にやれやれといったジェスチャーをしてみせる。

「乗り気じゃない…?」
「いやいや、まさかまさか。ユナティちゃん直々のお仕事だし、ちゃんとやらないと…あ、ユナティちゃんってのは魔法戦士団の副団長でね! きりっとしてる風だけどすっごくブラコンで、いい感じにからかわれてくれる素敵な女の子なんだけどねっ!」
「ちょちょっと待って! 話がそれてるそれてる! それにマッドハニーだって! それってまさかっ」
 世間話に花を咲かせるように、エリート集団の内部事情をぽろぽろ溢そうとするミャジを制止する。

 ─マッドハニー。ハニーレイクと並んでその名を轟かすプクランド大陸の蜜。

「その特殊性と希少性で名は広がれど、手にできる者はあまりに少ないアレの危機なのか!?」
 スウィ~トが詰め寄るように問うと、ミャジはしーと声を潜めさせる。
「いいリアクションだね♪ じゃあ行先も知ってるかな」

 ポーポラ地方の北部、きのこ山と汚れの谷を縫うように走る険しい山脈の奥に、マッドハニーの生産地がある事はもちろんスウィ~トにとって常識の範囲内だ。

「トロ・リリプ村。その村の信仰を集める大絶壁に咲くツツジ科の固有種ギャクナゲの蜜を集めたハチの巣から採取する。その味と危険度はまさに一級品だよ!」
 ちなみに有毒植物である。
 登攀中にその蜜を舐めた者は天地が逆になり、崖から投げ出されたとの逸話がある事から、ギャクナゲの名がついたと豆知識を披露するスウィ~ト。
 どや顔である。

「危険なものほど魅力的? 密猟者…かな?」
「ふつーの密猟ならいいんだけど。たぶんそうはいかない。って事で、親方歌姫だから依頼料もこれくらいは出せるよ」
「「いく!!」」
 ららっ!!
 貧乏人二名と謎の菓子袋はそろって返事をする。快諾であった。

「それじゃあ、地獄の登山へ出発進こーぅ…」
 突き上げかけた拳がみるみる勢いを失うミャジ。
「ああ、やっぱり貧乏くじ引かされた気がする。ユナティちゃんめー」
 上司への恨み言を聞き流して、二人は渡された前金を確認するのだった。



「くくく、少しばかり粉を混ぜたりするのが得意なくらいで調子にのりやがって」
 暗闇の中、口元を醜く歪めて笑う男は、自らの素晴らしい未来を夢想する。
「デイラーなんぞはすぐに追い落としてやる。このハニットキャロットケーキが完成すれば、あのダイキリンすら我らの手に堕とせるのだからな!」
 膨らんだ期待が男の言葉を強くさせる。

「事が成される前に気が大きくなっていると、足元をすくわれますわよ」
 闇の中の更なる影が、釘を刺すと男はくるりと振り返る。

「このヨップキッパ様任せておきな。下見もあらかた終わった。あとはごっそり頂いて、あんたのくれた魔界のレシピでドーピングケーキの大量生産と洒落込もうじゃないか」
「こちらとしては、マッドハニーが必要量頂ければどのようにでも」
 そっけない声は町娘の如く。
 だが、それは表面に現れた形の一片だけだという事を、ヨップキッパは本能で悟っていた。

(たとえ魔族だろうが何だろうが、魔物商人のプライドにかけて、利用させてもらうぜ)
 頬を流れる冷たい汗を感じながら、ヨップキッパは立ち上がり、自らの商品達に号令をかけるのだった。

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