DQXの二次創作小説。
独自解釈等が含まれます。苦手な方は読み進めないでね。
登場キャラクターの言動や設定も私の妄想です。
ご本人公認ではありません。ご注意ください。
1話は2019/06/23の日誌ですよ。
◆◆12話 大絶壁の神◆◆
スウィ~トはしっかりと地面を踏みしめ、背筋を伸ばす。
「おいリモ! そんなに大事なお師匠様だったのかよ!」
腹の底からまっすぐに言葉を吐いた。
視線もミャジの放つ矢に負けぬほどにまっすぐに。
コープスフライの数を増やし、そろそろスウィ~トを仕留めに行く頃合いかと首を巡らせたリモニーザは、その声と視線をまともに受けとめる。
「大魔王様…」
遠い時を思うように、瞳の色を深くしてリモニーザは続ける。
「そしてお師匠様が私の生き方を変えてくれた。終わりを飾り立てる必要はなくなった」
わずかに魔族の少女は微笑んだ。
本物の希望の光に照らされたのだというように。
「そんなに大事な人の遺品なら、もっと普通に探しにこいよ…。普通に返してと頼めよ」
あの顔を知っていた。
幼い自分があの甘い世界から戻って来た時、きっと自分もそんな風に笑っていたのだろうと確信があった。
「そうしたら、こんな事しなくても返せたのに。大事な人との思い出の大切さとか、ボク達だってよくわかるんだぞ!」
今からだって、戦いなんてやめて、ちゃんとベツゴウさんにも説明して、謝って、返してあげれるんじゃないかとの考えが、スウィ~トの脳裏に浮かぶ。
「はて? 異な事を。アストルティアの民如きに私の心の機微を分かった風に言われ、哀れまれるとはまったく…シロイロ」
主代行代理の意図に従い、静観していたシロイロは力強く連刃を引き付ける。
「え!?」
突然の事にバランスを崩してスティックがすっぽ抜けると、生きた蛇のように連刃はうねり振り下ろされる。
連なった刃がざくりざくりと胸元をえぐり、大輪の血の花が咲く。
「では、その首落としましょう」
とんと地を蹴ってリモニーザが跳ぶ。大鎌のごときスプーンを振り上げて。
我は堰。万物魔力の連綿なる流れに立ち塞がる者。
我が腕の水底にて、点となりし魔よ。戒めを超え──爆ぜよ!!
ミャジの雄たけびにも似た詠唱と強大な魔力の収縮爆発の気配が空気を震わせる。
そして大地は揺れ、幾筋もの雷が聖地に降り注ぐ。
「控えおろう。神の御前を血で汚す不届き者どもよ」
朗々と響く声は大絶壁の麓に開いた四角い穴からだ。
誰もが完全に状況に割り込まれて面食らう。
ミャジなど暴走しかけた大破壊を生み出すマダンテの鎮静に、必死に術式を組むので手いっぱいだ。
「大絶壁の秘められし土地神ソウチャ様はお怒りである。疾く消えよ痴れ者どもよ」
猫の手をかたどったような祭器の鈴を鳴らして歩み出たプクリポの如き者に続き、輿に乗り現れたのは枝分かれした双角を持った緑の肌をした半裸の何者か。
「ドワ男…よね」
呟いたリモニーザにシロイロも肯定。首を縦に振る。
「愚かな…神の姿を見誤るとは」
どこを見ているのかわからないプクリポ(?)が深い溜息をつく。
よい。こかぜよ…。神の力その身に知らしめるとする。
空気が震える事もなく『声』が皆に響き渡り、ミャジの、リモニーザの背筋に怖気が走る。
迷いなくシロイロ共々、闇の纏いへと姿を消すリモニーザ。
直観に従ってミャジが打ち上げた矢が、綺羅星の守りとなってヨップキッパ、スウィ~ト、ざらめ、そして自らに降り注ぐ。
直後──。
その加護は微塵に打ち砕かれ、ぼとぼとと上空を飛ぶ鳥が落ちてくる。
「大絶壁は恵みと毒の聖地なり…ゆめゆめ忘れることなかれ」
こかぜと呼ばれた司祭は鈴を鳴らしながら、輿と共にぽっかりと口を開けた地下迷宮へと消えていく。
そして何事もなかったようにその入り口は閉ざされ、あとには神の毒に充てられたコープスフライと哀れな生き物の骸が散らばるのみ。
「ああ…。戻ったら長期休暇貰おう」
生き残った実感にミャジは天を仰ぐ。
「そして詰め所に入り浸って、休日だからいいんだもんって言いながらユナティちゃんやアスカちゃん弄ろう…」
そこまでやらないとこの任務は割に合わない!!
心底、ミャジは疲れ果て決意を固めるのだった…。
つづく
今回は少しあとがきを。
大絶壁編を書くにあたり、こかぜさんを(勝手に)描くことは決めてました。
イラスト勢の人も是非という思いがあったのです。
当初は普通に大絶壁を守る村のシャーマン的存在だったのですが…より12巻のイラストらしさを重視してこうなりました!
インパクトもアップしたし個人的には満足です^^