こちらはDQXの二次創作小説。
独自解釈等が含まれます。
苦手な方は読み進めないでくださいね。
ケケさんを含めて登場キャラクターの言動や設定も私の妄想です。
ご本人公認ではありません。ご注意ください。
1話は2019/06/23の日誌ですよ。
◆◆13話 忘れ物◆◆
「く。忌々しい…。魔界であれば逃げる必要など」
転移と同時に着地の衝撃を殺すかのように膝を折り、リモニーザは苛立たし気に呟く。
本来、魔族が生きる世界である魔界と違い、こちらの世界では大きく力を削がれる。
にもかかわらず、多くの魔族がアストルティアの大地を目指す。野望、興味、愉悦、復讐、理由は様々だ。
「まったく、気が知れないわ」
気持ちを落ち着かせるように長く息を吐くと、何事もなかったようにリモニーザは立ち上がる。
首を巡らせればシロイロも何事もなかったように佇んでいるのが見えた。
ひとまずは安心。内心胸をなでおろす。
「主代理代行…忘れ物」
目が合うとシロイロの可憐な唇が開かれた。
何の事だろうと思い返す。確かに慌ててはいたがシロイロはちゃんとここにいる。愛用の武器もある。
あの魔物商人はどうでもいい。蜂蜜は…他に手がないわけでもない。買うとか。
「ざらめ」
「あの子の中にレシピはなかったから忘れ物というわけ…ああぁぁっ!!」
端正な顔が驚愕によって形を変える様は、シロイロでなければかなり楽しめたであろう。
「そうよ。マッシュウが妖精世界のゆかりの品が変化したって…何てこと、持ち帰っていればそっち方面の手掛かりになったかもしれないのに!」
ああぁ、私の馬鹿。なんで置いちゃったのよ。
いえ、だって、もう勝つ流れだったし、あとからいくらでも拾えるはずだったし!
わなわなと両手を震わすリモニーザの背をぽんぽんと叩くシロイロの表情はまったく変わらない。
「人の家の庭先で、楽しそうねリモちゃん」
不意に声を掛けられてリモニーザは背筋を伸ばし、真顔を取り繕う。
慌ててアビスによる転移を行ったが、そういえばここは……。
「お久ぶり。シロイロちゃんも♪ どう、ナナイロちゃんは元気?」
「最終邂逅時に、身体能力において74%、耐久性において56%、魔力総量において187%以上の向上。ナナイロは元気…と判断」
「いや、そうじゃないんだけど。まあシロイロちゃんには難しい言い回しだったかしらねぇ」
結い上げた髪を花飾りのかんざしで纏めたウェディ風の魔族。
男も女も魅了するような蠱惑的な声に、愛嬌のある困惑を含ませこの場所の主ケケはシロイロの頭を撫でる。
「すまないな。急な事態で思わずここに転移していた。すぐにお暇しよう」
まさか先ほどの狼狽を視認されていないだろうか?
疑心暗鬼に思わず一筋の汗が流れるが、平静を装うリモニーザ。
「えー。帰っちゃうの?」
そこに飛び込んできたのは元気でかわいい女子の声であった。