DQXの二次創作小説。
今週の日曜日はお話を二回アップしています。
本日(2019/12/01 14:32)『13話・忘れ物』が先の話になるので注意を。
独自解釈等が含まれます。苦手な方は読み進めないでね。
登場キャラクターの言動や設定も私の妄想です。
イズナさんをはじめ、ご本人公認ではありませんのでご注意ください。
◆◆14話 お茶会◆◆
「えー。帰っちゃうの? 二人でお茶してたところだしぃ? リモリモも座ろ―よ。何から逃げたのか知りたーい♪」
先ほどの姿を見られた事は、花壇の傍に設えられたテーブルで茶を楽しむイズナの言葉で確定した。
ふう。とため息をつきリモニーザは、屈託なく笑う褐色のスウィートデビルの隣へと腰を下ろす。
「菓子の材料を調達に行った先で小競り合いがあっただけよ。運悪くそこに土地神がいてね。まったく、本当に忌々しいわ。アストルティアなんて……」
ふくれっ面をして、アフタヌーンティースタンドから可愛らしい貝殻型のチョコをつまむリモニーザ。
「力が減るのは確かに違和感バリバリあるけど~。こっちって楽しくない? 魔界だと服飾気にする層って、上流階級と一部の物好きだけでさぁ。流行の動きも遅いし? それに比べてこっちってすごくない!」
異界の大地に不満を漏らす友人に対して、イズナは子供のように歓喜に満ちた表情で語る。
「お菓子もそうよねぇ。実用面と味、それから権威付けの飾りが重視されがちで、純粋にお菓子がお菓子として味や見た目を追及されてるのは、少し羨ましいわ」」
もちろんアストルティアにも魔界と同じような面があるが、その比率が大きく違うとケケは感じている。
「ふん、マデサゴーラ様が芸術を解する素晴らしい方だったおかげで、ずいぶん意識改革が進んできてる…アストルティアなんかには負けないわ」
大魔王様は物事の本質を見る事のできる方。
愚かで野蛮な我が一族を打ち滅ぼし、私と師匠を巡り合わせてくれた大恩人。
「あー。大魔王様がこの世界を染め上げる日が早く来るといいのに」
シロイロ共々、紅茶を供されたリモニーザは、ゆっくりとカップを傾け…目を見開いた。
「え、なにこれ? 甘みを極限まで控えて爽やかな風味。まさか…」
いそいそと先ほどのチョコを摘まんで口に運ぶとリモニーザはケケを真正面から見つめる。
「このチョコの繊細な甘みが何度でも蘇る…。そう意図してる?」
「どう? それもアストルティアの連中のチョコから思いついて試行錯誤したのよ♪」
ケケは微笑むとシロイロにはケーキを取り分けてあげる。
「そもそもリモリモのししょーも、こっちに来てたじゃん?」
イズナの指摘にリモニーザは視線を落とす。
本当にみんな物好きだ。
確かにこちらにも価値あるものが存在するのかもしれない。
でも、この場所は…敵地なのだ。
「ああ、そうだな。そしてきっとこの地で亡くなったのだ。師匠は…」
顔を上げずに呟く姿は、どこか小さく痛々しい。
ある日、大魔王様より預かり大事にしていた師匠の助手であるシロイロだけが戻ってきた。
師匠が託したというレシピの片割れだけを持って。
「そうだったの。それでリモちゃんもアストルティアに渡ってきたのね」
ケケは優しく微笑むと、リモニーザの細い肩に手を添える。
「今夜は泊まっていきなさいよ。別にどうこうしないし…言わせたりもしないわ。でも、ね?」
大勢で過ごす夜があってもいいじゃないと告げる。
「あー。ほら、イズナこういう雰囲気苦手だから、きっといい事とか言わないけどさー。一緒にいるくらいはするよー?」
少しばかり照れくさいのか、そっぽを向きつつケケに賛同する。
「変に気を遣うな。一応私の方が年上なんだぞ…。いや、まあ…感謝する」
ぽろりと漏らした心情が、こんなふうに溢れて受け止められるとは思わずにリモニーザの顔にも朱がさしている。
そんな微妙な優しさの空気があふれる中、シロイロは虚空を載せるだけになったお皿を見つめる。
もう一切れくらいケーキを食べたいなと思っていたとかいなかったとか。