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トロける5000年

ワッサンボン

[ワッサンボン]

キャラID
: XG969-178
種 族
: ドワーフ
性 別
: 男
職 業
: 武闘家
レベル
: 122

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ワッサンボンの冒険日誌

2019-12-22 16:07:53.0 テーマ:その他

甘々の冒険者達『17話・ランガーオ村にて』(DQX二次創作)

DQXの二次創作小説
独自解釈等が含まれます注意

◆◆17話 ランガーオ村にて◆◆

 右から来た拳を木剣で打ち払った。
 そもそも、打ち払われただけで済む拳という概念がおかしい。

 左下から蹴りが跳んでくる。これを受けてはいけない。
 腕が痺れて剣を取り落としかねない。こっちは鎧姿…なんだけど。

 半歩下がって避けた! 私すごい!
 上段へと振り抜けて、背中を見せるかに思えたけど、くの字を描いた脚が今度は鎌の如く頭を刈りにUターン。

 もう一度右の木剣を軌道に割り込ませて、頭を守る。
 その剣の腹を、足裏できっちりと踏みつけて、彼女はもう片方の足をも空中へ躍らせる。
 
 つまり一呼吸する暇もなく、反対側の足が跳ね上がって私の顎にばびゅんと迫る。なにそれ怖い!

 せめてもの幸運は私が二刀流使いな…こと?
 左の木剣を突き入れて相手の回転軸を狙う。同士討ちになれば…ならない! うん…予感してた!

 いつの間にか手にしていた棍で大地を突いて、軌道を変えると銀髪をなびかせ、あっさりと背後へ消えていく。
 あっと思う間もなく、足払いが私を重力から一瞬だけ解き放つ。

 どすん。
 ふぎゃっ…。

 落下音と私の悲鳴が寒空に短く響いた。完敗である。

 私、アイシスは…今日もまた帰省中の彼女、マイユさんに稽古をつけてもらっている。

「アイシスさん。突きに転じたのすごくいい判断だったと思います」
 差し出された手が力強く私を引き上げる。

「あ、りがとう、ございます」
 彼女の心身の強さはすごく刺激になって、この村を紹介してくれたライオウさんには、結構感謝している。
 身体はとっても痛いけど……。

「ひとまずは休憩にしましょう。根を詰めすぎると危険です」
 提案に頷いて、武闘場から村へと続く坂を下る。


 穿つ穴は細く。

 偏りを作らず360度全方位に。

 手首を柔らかく、安定したリズムで棒を操る。

 膨らんでいくその姿に見守っていた子供達が歓声を上げる。

「スウィ~トすごい!」
「蝋燭でわたあめができるなんて! ねえ、食べていいの!?」

「もちろんだよ♪ 甘い幸せをぜひ~!」
 ららっ! らら!!

 一人と一匹に笑顔を向けられ、まずランガーオ村代表として少女フウミは舌を伸ばす。
 ぺろりと一口。その甘味に歓声を上げると、子供達は自分も私もとわたあめ祭りだ。

「器用なものだ。穴を開けた鉄のコップを小規模なバギで回転させているのか」
「そこに砂糖を入れて熱せば、穴から飛び出した糸のような飴を絡めとれるからね! ツボか何かを外側のカバーに使えば行く先々で、子供たちに振舞えるでしょ♪」

 感心するアロルドに得意げに説明するスウィ~ト。
 力強い戦いを得意とする迫力ある武術家も、生まれ故郷の子供達が喜ぶ姿に目を細める。


「…ワッサン…ボン?」
 孫を見守るおじいちゃんの如き目をした男達二人に、アイシスは氷の視線を向ける。

「あなたまで」
 口元を隠して笑いをこらえるマイユの姿に、アロルドもばつが悪そうに赤面する。

 二人も体術の修練をしているはずだったのだ。

「いやあ。昨日ウェナ諸島の焼き菓子カノムクロックの話で盛り上がっただろ! 外側のカリッとした食感や、とろりとしたココナッツミルクの甘みの素晴らしさ!」
 確かにスウィ~トはそんな食レポを語り聞かせていた。

「となれば今日は何か実際に振舞いたいのが人情! スウィ~トスター☆の役目でしょ!」
 なにかというか、自作出来るのはわたあめくらいなのがこの男なのだが。

「子供達の期待がすごくて…ついな」
 アロルドも申し訳なさそうに頬を掻く。
 アイシスと違ってマイユはそういう所にも好感を抱いていたのだが、そこは二人の仲ゆえだ。

「とりあえず…基礎練を…追加」
「へ?」
 ぽつりと言うとアイシスはスウィ~トを強引に振り向かせ、その背中に全体重(鎧込み)を預ける。

「ぬおおぁぁ!? お、重い! 鎧が冷たい!!」
 そもそもオーガとドワーフの体格差はかなりのものだ。
 重武装のままのしかかられて、スウィ~トは悲鳴を上げる。

「このまま…暖かい屋内まで…よろしく」
「ぐうおおお!? まじかっ!! ひぃぃぃ」
 騒ぎ立てながらも、歩き出すスウィ~トの周りで、子供達が囃し立てる。

「がんばれー!」
「きゃー。おんぶじゃなくてお姫様抱っこにするべきよ!」
「できるかぁぁ!!」

 数日のうちにすっかり打ち解けた二人に、マイユは微笑む。
「ユルールが旅立って、少し寂しかった村も、またにぎやかになったわね」
「そうだな。オレ達もまた修行に出る身だ。こうやって村が賑やかな日は多い方がいい」

 残された道具を片付けながら、アロルドもまた微笑みを返すのだった。
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