DQX&ソウラの二次創作ゆえ独自解釈等有り。注意!
◆◆21話 雪原の戦い◆◆
冬の太陽の光できらめく雪原。
白と灰、濃淡が織りなす炎があちらこちらで燃えている。
「うわあーん! また一体増えたぁ!」
「フルートやめちゃダメ~! 春の力で封印を強めてあげなきゃ。がんばれー」
円陣を組んだ冒険者達の真ん中で、マユミに元気づけられたベラが、再びフルートに唇を寄せる。
妖精の国でも貴重な一品から、豊潤な春の花々の香りのように心躍らせる音色が広がる。
「ぐぬぅ! その音をやめろぉ!」
今しがた手近にいたブリザードを、まるで自らの分身のように作り替えたインフル炎ザードが、闇で形作られた自らの眼を怒りで吊り上げる。
白い炎と表されたその姿の半身が、力を削がれに灰色に染まっていく。
その身に絡む蔓草の鎖が、小さな紫の花を咲かせようと震えだす。
「うおお! もっとオレを冷やせぇ! 寒さをよこせぇぇスプレッダーどもお!!」
作り替えたブリザード達に呼びかける炎ザードの絶叫。
「させん!」
主に向かって冷気を吐き出そうとするスプレッダーの大口に、アロルドの大きな拳がぶち込まれる。
「雨天燕斬り…」
超低空を切り裂くアイシスの刃は足を斬り飛ばし、スプレッダーは倒れながら天に冷気を吐き出していく。
自らの身体をも遮蔽物としてスプレッダーのブレスを止めた二人を、ぱにゃにゃんの儀式舞踊が癒していく。
詠唱と魔力構築による魔法を所作によって行うその姿は、雪の中を美しく舞う蛍の如く。
「あーちょっと、そっち抜けられるわよっ」
そんな神秘的な妖精から飛んでくる檄にスウィ~トは額の汗をぬぐって考える。
左右から迫った二体が今にも冷気を吐き出しそうだ。
(ボクはそもそもリーチが足りない。一人で素直に戦うなっ)
「ざらめ、そっちにありったけごちそうしてあげて!」
「らっ!」
左手の盾に飛び乗ったざらめを、そのままブーメランの如く投げつけると、ざらめの操るお菓子達が、栓の如く魔物の口に殺到する。
もう一体の瞳がギラリと光り、目標をスウィ~トに変えて大口を開くと豪雪風が吐き出される。
「狙ってくるなら、逆にやりようもあるんだよ! 吐息返し。ねじりドーナツの如く♪ってね」
扇に乗せる魔力にバギの構成術式を組み込むと、豪雪風のブレスは螺旋を描いて跳ね返る。
「よし! いいアイデア!」
「…それ反射しても」
「ダメなのはわかってるよ! ぱにゃにゃんっ、足場を!」
スウィ~トの呼びかけにぱにゃにゃんが、すぐさま詠唱する。
「もー、皆妖精使いが荒いのよーっ! ヒャドヒャドヒャド~」
続けざまに放たれた氷結呪文が地面に即席の足場を作ると、スウィ~トは一気に距離を詰める。
「実際、体幹と足腰は重点的に鍛えられたんだから、これくらいはね!」
最後の一歩で跳躍し、スプレッダーの顔面に蹴りを二発お見舞いする。
「どうだ!?」
実体が中途半端な魔物に不安を覚え固唾を飲むが、スプレッダーはそのまま霧散する。
「いい蹴りだった。成果が出てきたな! ふん」
手ほどきをしたゆえの喜びにわずかに笑うと、アロルドも目の前のスプレッダーをその拳で打破する。
「でも、手数…拮抗しちゃってる」
アイシスも相手を仕留めるが、その間にもインフル炎ザードは、スプレッダーを増やしている。
「押忍っ! わたしも戦うよ!」
右手を突き出したマユミの眉がきりりと上がる。
「マユミはちゃんと石の面倒見ててってばっ!」
「うー、でもでも」
ぱにゃにゃんに言われて、今度はマユミの眉尻が下がる。
マユミはベラから一つの石を託されていた。
ポカポカストーン。
妖精の国の春の力を凝縮させたこの石を、インフル炎ザードの核に接触させれば、再び大病魔は封印できる。
だがこの低温の世界ではその力は常に削がれていく。
それを防ぎ守るべく、妖精としての魔力をマユミは常に注ぎ続けているのだ。
(でも、このままで大丈夫かな?)
マユミの心に焦りが渦巻く。ベラとて春風のフルートを吹き続けるのは骨が折れるはずだ。
かいり……。
ここに彼女がいてくれれば。
太陽のような笑顔が思い浮かぶ。
そして、熱にうなされ苦しむ彼女の顔が。
マユミは息を大きく吸い込むと、思いっきり声を張る。
「フレーフレーぱーにゃ! がんばれがんばれアロルド! 負けるな負けるなアイシス! やっちゃえやったえスウィ~ト! ざらめー!!」
不安なんて吹き飛ばす!
かいりが…冒険者という者がそうやってきたように、元気と勇気で切り拓く。
今自分が出来るのは、皆の頑張りを信じて機会を待つこと。
すべての思いを込めて声援は雪原に響き渡る。