DQX及び蒼天のソウラの二次創作。
独自解釈等有りますので注意!
アロルドやベラはもちろん、ぱにゃにゃんさんやマユミさんの描写も
あくまで私の妄想です! 公認ではないですからね!
◆◆23話 小悪魔的作戦◆◆
インフル炎ザードの弱点である核は確かにそこにあった。
だが驚異的な修復能力と、魔物特有の非常識な攻撃が、冒険者に勝利を掴ませない。
「おおーい! こっちも限界だぞおー」
取り巻きを引き付けたため、スプレッダーにもみくちゃにされる寸前のスウィ~トからも焦りの声が上がる。
「このままじゃだめ。行くね。ぱにゃ」
こうなったら何とか隙を見てポカポカストーンをねじ込もうと決意するマユミに、ぱにゃにゃんは待ったをかける。
「ねえ、マユミ。かいりのばか並みの無茶苦茶…やってくれる覚悟ある?」
真剣な顔で問うのは、ずっと昔から姉妹のように接してきた黒の妖精。
「もちろん。任せてよ!」
白の妖精はそんな彼女に、はち切れんばかりの笑顔を返した。
「よっし! アタシ達の冒険者の矜持、見せてあげましょう♪ 作戦はこうよ」
ふむふむと耳打ちに頷くマユミ。
そんな二人の姿に懐かしさを感じてかベラの旋律に柔らかさが増す。
「押忍! まかせてぱにゃ!」
マユミがビシっと突き出した拳に、ぱにゃもこつんと拳を合わせる。
そこからマユミは準備を始める。呪文で物理防御を固め、ブレス抵抗を高め、呪文耐性を上げるために精神を集中する。
徹底した防御の構え。
その間にもぱにゃにゃんの指示が飛ぶ。
「アロルドとアイシスは勢いを変えずに! どんどん攻めて! スウィ~ト! 合図したらこっちのすぐそばにバギクロスだからね!」
「この状況で? しかもそっちにーぃー!?」
「そーよ! あ、回転は右回転でお願いね!!」
「しかも細かい!?!? なんだそれはっ!」
「まだ秘密よ♪」
とびっきりのいたずらを隠すように、小悪魔スマイル全開を披露するぱにゃにゃん。
だが、その瞳と思考はこの場所で誰よりもフル稼働していた。
(アイシス達のタイミングが…たんたたったんたん……で核が見える。スウィ~トのバギクロスは、訓練を見ていた限り大体同じ出力のはず…回転速度さえ合わせられればやれる…うん)
すべてのタイミングを計る。
効果的ないたずらには絶対に必要な、機会を掴む事、流れを読む事。
日常でも戦場でも、ぱにゃにゃんの得意とするところだ。
「スウィ~ト! いまっ!!」
「「バギクロスっ!!」」
ドワ―フ少年の暴風呪文詠唱に、ぱにゃにゃんの詠唱がピタリと重なる!!
「マユミ、行ってきます!」
二つの暴風の柱のわずかな隙間に、マユミが頭から突っ込む。掲げたポカポカストーンごと。
「えええーーーーーっ!!」
呪文を唱えたスウィ~トが顎が外れんばかりに驚き、ベラがフルートを取り落としかける。
そこから一呼吸、いやその半分にも満たない時間で勝敗は決していた。
「な、なんだと!?」
インフル炎ザードが理解を超えた状況に声を絞り出す。
マユミが両腕で突き出したポカポカストーンが半分近く、その核に埋もれていた。
「二つの高速回転で撃ちだしたマユミは…音速を超えるのよ♪」
まあ、それは言い過ぎだけどね。と心の中でだけ苦笑いしたぱにゃにゃん。
「マ、マユミは意外と根性あるんだから~」
自らを弾丸扱いする作戦に、早鐘のようになる心臓を感じながらマユミが手を放して胸を張る。
「こ、こんなことがぁぁぁ!!」
インフル炎ザードの叫びと共に、その身に絡んでいた蔓草の鎖が新緑に色づき、急激に繁茂する。
警戒を解かず後ろにマユミをかばったアイシスとアロルドの眼前で、大病魔は色味を失い小さな花々が咲き乱れる一塊へと変化する。
「や、やったわー!」
ベラが思いっきり飛び上がって、勝利を叫ぶ。
「た、助かったあ」
力の源を失ったスプレッダー達が燃え尽きるように消えていき、スウィ~トが安堵の声を上げる。
「小さな体に秘めた度胸と勇気…まったく大したものだな」
「うん、すごい」
「えへへ。みんなもお疲れ様」
アロルドとアイシス、マユミが拳を合わせて、恐るべき病の元凶を封じた事を祝福する。
茜色に染まり始めた雪原で、冒険者達は勝利をかみしめるのだった。