DQX及び蒼天のソウラの二次創作
「ありがとうございます」
礼を言うスウィ~トの元に今度はベラが何やら棒状の物を抱えて飛んでくる。
「私からもお礼をあげるわ。あなたにぴったりの春一番の力が込められた錫杖よ♪」
長い柄の両先端にいくつかの宝石が嵌め込まれている一品。
上部には湾曲した金属板が付けられ、その内側は鋭く研ぎ澄まされキラリと光る。
「鎌じゃんこれっ!!」
バブルスライムの頭頂部に、そっと横たえられた品につっこまずにはいられない。
「違うわ! そこは力強い風を表す装飾なのよ!」
言い訳をするベラに、ポワンが笑う。
「風の呪文を使うあなたにちょうど良い品なのは確かですから」
「でもさすがにこれは訪問した先の子供達に警戒されそうで…」
善意はありがたいが何とも困る。
「では、このように」
ポワンは言いながら、鎌をなぞるように手を滑らす。
すると刃はくるりと丸まってストロベリーコーティングで飾られたチョコボールに姿を変える。
リボンできゅっと結ばれているのも可愛らしい。
「あ…いいかも」
アイシスが思わず漏らすほどの出来栄えに、スウィ~トも瞳を輝かせる。
「これで問題なしね! アイシスは靴ね。妖精の加護で悪路に強いわ♪」
ベラは箱をアイシスにむぎゅっと乗せる。
雪原で苦心していたのを覚えていてくれたのだろうと、アイシスの胸の内がすこしじんと温かくなる。
「こんなにいいの?」
「んふふ。遠慮するのはまだ早いわ。今日は美味しいものも食べてもらっちゃうから!」
まだ帰さないとばかりにアイシスにベラが飛びつくと、機をうかがっていた妖精達もわーっと集まってくる。
長話にうつらうつらしていたざらめも、ペタペタと触られてくすぐったそうに身をよじる、
同じくスウィ~トもまた妖精の宴へと引っ張られていくのだった。
そこからはさらに目まぐるしい。
丸一日遅れでランガーオ村へと帰還すると、体調を崩していた村人が回復に向かいつつあった。
ささやかな祝宴が村王主催で開かれたが、それは別れの宴でもあり、翌朝には二組の冒険者達はともにランガーオ村を出立する。
「ヤバい悪鬼がいるとか聞いて来たんだけどね。ちょっと前に封印されなおしたらしいのよねー」
大剣を背負い腕組みするかいりの顔には残念無念と書いてある。
「で体調もすっかり良くなったから、さっそく次のクエストを探しに行くことにしたのよ!」
寝込んでいたのなんて何カ月も前の話よと言いそうなほど、色つやのよい笑顔で遠く彼方を指さす姿に、マユミとぱにゃにゃんも心底嬉しそうだ。
「まさか本当に半日足らずで体力を取り戻すとは、オレも驚いた」
「もう少し休んでいけばと思ったけれど、心配は無用だったみたいね」
アロルドとマイユが並んで微笑む。
「それならスウィ~ト達こそじゃない? 帰ってきて宴会で、すぐさま出発で大丈夫なの」
ぱにゃにゃんが自分達と同じように旅支度を済ませた姿に問いかけると、アイシスがこくりと頷く。
「ベットで眠った後に出発できる…かなりの好条件」
「うんうん。それは言えてるねー。宿屋が使える時のぬくぬくな日々と野宿はとーっても違うもん」
冒険者ならだれもが実感するであろうその差。マユミも大変納得できる心情だ。
「ファンに別れを告げるのはいつもながらつらいけどね。みんな、お菓子の幸せ忘れるなよな~」
キメ顔で見送りの子供達にも、短めの緑の手を振るとスウィ~トに熱い言葉が投げかけられる。
「ありがとうー! また来てねー!! 新作持って~」
「温かいのとか今度は知りたいからー! 実際にこのお口で!!」
「百聞は一見に如かずだよ―、スウィ~トスター☆!!」
「ことごとく現物のお土産を要求するなーっ!!」
うがーっと怒った真似をすると、子供達もきゃーっと散り散りに逃げ出していく。
「うん。じゃあ…湿っぽくならないうちに、行く」
アイシスが荷物を背負うと、村の入り口のオーガの角を模したようなアーチを潜る。
「そうね。マイユ達もしばらくしたら旅の空の下らしいし、どこかで会いましょ!」
かいりが力強く一歩を踏み出す。
「一応病み上がりなんだから、ペースは考えなさいよ」
頭のすぐ横まで飛んで追いつくと、ぱにゃにゃんが注意する。
「みんな、またねー!」
ぺこりと頭を下げた後、マユミも反対側へと飛んでいく。
「さて、それじゃあ…竜の卵を追った冒険者の足跡を追ってみるとするか。なんだか遠回りっぽいけど、これもドラゴンクエストになるのかもな~」
ふと蒼天を行く鳥を見上げて呟くと、スウィ~トはアイシスに追いつくべく駆けだしたのだった。
◆◆27話 ボクのドラゴンクエスト(仮)◆◆
※続くよ!