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トロける5000年

ワッサンボン

[ワッサンボン]

キャラID
: XG969-178
種 族
: ドワーフ
性 別
: 男
職 業
: 武闘家
レベル
: 122

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ワッサンボンの冒険日誌

2020-06-28 16:00:42.0 テーマ:その他

甘々の冒険者達『43話・マグロ』(DQX二次創作)

DQX及び蒼天のソウラの二次創作です。
設定や人物の言動など個人の妄動です。


◆◆43話 マグロ◆◆

「せっかく羅針盤の件が片付いたと思ったのにまたトラブル発生とは思いませんでした」
 グランドタイタス号の廊下。赤いカーペットの上を急ぎ足で進むのは副船長のダドリー。

「はい。少し前から噂になっていたのですけど、先ほどついに怪我人が出てしまいましたわ」
 それを先導するのは緑の制服に身を包んだ客室案内係のエルマ。

「しかし本当にそんなものが出ているとは…」
「幽霊の噂などは出ては消えちゃうものなんですけど、今度ばかりは本物みたい」

 二人はそろって階段を降りる。
 がっしりとした木造の手すりは重厚で、下部に施された細工は繊細。こちらも赤いカーペットが敷かれ、掃除と手入れに抜かりはない。

 豪華さと安心感をお客様に与える船内としていつもと何一つ変わらず、自分達以外にも女性客がちょうど二人階段を上がってきている。

 本当にこんなところに謎の幽霊が?
 いぶかしみながら進むダドリー達と乗客が階段の中央付近ですれ違うまさにその瞬間。

 飲料貯蔵室の壁をすり抜けて眼前に飛び出してきたのは巨大な魚類。

 マグロであった。

 黒々とした背中と立派なヒレ。流線型の美しいラインを持つ魚体。
 迫力のある口がパカリと開かれ、まるで自分を呑み込もうとするかのような勢いで迫るそれが、一瞬で通り過ぎ対面の壁へと吸い込まれていく。

 息を吸うのも忘れたダドリーが一拍後に、うわああっと声を上げる。
 ひいぃぃんと泣きそうになってへたり込むのはエルマである。

「ふうん。珍しい」
 一方ベールで目元を隠したエルフの乗客は足を止め、一言そう呟いただけだった。
 
「霊体では……様の夕飯にはなりませんね」
 さらにもう一方、大きな帽子と口元を隠した衣装の女性は、残念そうに消えた壁を見つめるのみ。

「す、すごい度胸…」
 座り込んだまま二人の女性を見上げるエルマの呟きに、ダドリーがハッと我を取り戻す。

「お二人は冒険者とお見受けしました! その冷静なお姿、この件の調査をお願いするに相応しいと感じております! どうかお話を!!」

「はっ…?」
「冒険者ではありますが、ユルール様の許可もなくクエストは…」
 エルフの女性が素っ頓狂な声を上げ、帽子の女性は困惑した声を上げる。

「おお、確かにユルールさまのパーティーのディオニシアさまではないですか! あまりの事に動転して失礼しました。是非お力をお貸しくださいませんか」
 この船の特別な羅針盤に関するクエストを片付けた実績のあるユルールパーティーとなれば心強い。

「えっ…ユルールのパーティー。というとあのユルールの!?」
 エルフの女性も声が上ずる。明らかに動揺が見て取れる。

「はい。そのユルールで間違いないかと存じます」
 ちょっとばかり誇らしげにディオニシアが頷く。

「それならば、私が関わるまでもありませんわよね。ここはすべてお任せするという事で…」

「えー! リモリモも手伝ってあげなよー。見学も飽きて来たしぃ」
 体よく断ろうとするエルフ女性を遮ったのは肩や太ももを大胆に魅せるドレス姿のオーガ女子だ。

「イズナ!? いつの間に、というか余計な事を言わないで」
(ユルール、見てみたいなっ♪ それにほら、ここであんまり揉めるとバレちゃうかもだぞ♪)
 抗議する友人の耳元にオーガ女子の姿をとった魔族のイズナは絶妙の距離感で囁きかける。

「冒険者の流儀を考えればパーティーでの相談が必要ですね。すぐお返事というわけにもいきませんでしょうから、お受けいただけるなら操舵室にお越しください」
 冷静さを取り戻したのかダドリーは、丁寧に頭を下げる。

「承知しました。お返事にまいります」
 ディオニシアもまた丁寧に礼を返すと、仲間の元へと戻っていく。

「わかりました。こちらもお返事は後ほどに」
 リモリモと呼ばれたエルフもまたイズナを引っ張るようにして船室へと帰っていくのだった。




「やだやだぁ。イズナちゃんもう船内の見学飽きたもん」
 シロイロとリモニーザの眼前で主張するのはイズナだ。

「マグロの幽霊をちょこっと調べるだけなら戦わないだろーし、リモリモ幽霊とか得意でしょー。やろーよー。ねっ♪」
「リスクが大きすぎるでしょう? しかもこの期に暗殺するというわけでもなく…ただユルールを見てみたいなどと」

 おねだりする友にため息を吐きながら徹底抗戦するリモニーザ。
 だが彼女は一つ忘れていたのだ。

「言っとくけど、チケット手に入れたのイズナなんだからね!」

 このたった一つの事実で、決定権はイズナにあったのだった。
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