DQX及び蒼天のソウラの二次創作。
自キャラと公式キャラの絡みなどもあります。
独自解釈等有りますので公式との齟齬も生まれます。
苦手な方は読まないで頂けたらと。
なお1話は2019/06/23の日誌からです。
◆◆48話 マグロ。その甘い夢◆◆
ぎぃっと小さな音と共に倉庫の扉が開かれる。
大丈夫だったのかと心配されるディオニシアは少し疲れた顔ではあったけれども、問題ありませんと応じている。
「で? で? お話はできたのー?」
「やっぱり生粋の釣り人とかそういう感じだったり?」
興味津々で問うイズナとスウィ~トに、このクエストが始まって以来初といえる笑顔でリモは応じる。
「なかなか面白い執着を持つ幽霊のようです。正確に言えば彼は釣り人ではありませんわね」
「ん、なら料理人…とか?」
「それも完全な正解とは言えません」
「もーもったいつけるのねぇ」
「そうだそうだー。ほうれんそうが大切だぞー」
イズナとスウィ~トが同調して先を急かすと、ユルール達の方でもえー!?っと声が上がる。
「あの幽霊は菓子職人、パティシエなのですよ。しかもマグロの可能性を夢見る稀有な、ね」
リモの口の端がさらに楽し気に上がる。魔族ではと疑うアイシスから見れば邪悪とも感じるような笑み。
「うおー!? マジ!! マグロスウィーツとかあり得るの!? すごい! 見たい! 食べたい! 味わいたい!!!」
「スウィ~トちゃんマジ? さすがにちょっとヤバげじゃなぁい?」
「かなり…高難度案件?」
「だよな。エルトナじゃあ寿司のネタとして大人から子供にまで愛されてるけど、菓子とか聞いたことがねぇ」
思わずアイシスやアマセまで警戒心を投げ捨ててワイワイと会話に加わってしまう。
「周りの見えていない幽霊からなんとか会話を引き出してみたら心残りがこれとは…そりゃげっそりもするよね。お疲れさん」
シアの背をぽんと叩いて労うヨナにありがとうを返して、シアは皆に入室を促す。
「今ならお話も出来る状態です。菓子や調理に詳しい方を含めて仔細を聞いて、協力してあげる事が霊を静める事になるはずですので」
「皆で頑張ろうー!」
ユルールがほんわかと続けるとアマセやイズナ、スウィ~ト達がノリノリで答えて倉庫へ突入していくのだった。
『だめだ! 赤身とクリームが調和しない!! なぜだぁぁぁ』
美しく透き通った竜胆の花が咲くようなパフェグラスに生クリームが!バニラアイスが!チョコレートが!スティック菓子が!フルーツが!積み重ねられ、頂点には美しく鮮やかな赤身が薔薇の如く花開く。
その前でエルフ族の男性、幽霊が膝を降り大地を叩きつけていた。
「いや…そのまま載せてもダメ。当然」
思わず駄目だししちゃうアイシスに、横から言うだけなら簡単なんだよぉぉ!と抗議する幽霊。
確かに一応コミュニケーションは取れるようだ。
「パティシエの発想がそれでいいのかい」
気が抜けたヨナの言葉に、生前そままというわけにはいかないのだとシアが口添える。
「あと…これも霊体?なんだね。ちょっと透けている」
マグロパフェを観察していたユルールの言葉にスウィ~トが肩を落とす。
「味見…できないのかぁ」
「ふふん。実は私は出来ますけれどね」
あからさまにしょぼくれるスウィ~トの姿に、つい優位性を口にしまうリモ。
「リモリモも地がでてきたじゃ~ん。打ち解けてきちゃったり?」
「! そ、そういうわけではないわ」
確かに今のは余計な一言だ。目立たぬようにするつもりが知らずに対抗心を持っていたのかとリモはショックを受ける。
「デスマスターとかそういう系の力なのかなぁあ。ああ、羨ましぃぃ!」
「でもディオニシアさんとリーモニンさんだけが味見、非効率。同時並行で…私が作る」
「じゃあ実際の食材や道具も持ち込まないといけないね」
「よし! 調達班と会話班、調理班に分けて進めるとしようか!」
仕切りは任せなとアマセが張り切ると冒険者達は一気に活気づく。
『…私の夢…に助力、する?』
自分の事でわいわいと騒ぐ冒険者達に目を向ける幽霊が、呟くように口にする。
「「「その通り!!」」」
言葉でジェスチャーで沢山の肯定を返されて幽霊の瞳にさらなる意思が強く宿る。
『うぉぉぉ! やってやるぅマグロの新境地を見せてやるぅ!!』
生者に負けぬ雄たけびがマグロスウィーツクッキングの開始を告げたのだった。