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トロける5000年

ワッサンボン

[ワッサンボン]

キャラID
: XG969-178
種 族
: ドワーフ
性 別
: 男
職 業
: 武闘家
レベル
: 122

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ワッサンボンの冒険日誌

2020-08-16 21:25:58.0 テーマ:その他

甘々の冒険者達『50話・夜話』(DQX二次創作)

DQX及び蒼天のソウラの二次創作。
独自解釈等有り!ご注意を!


◆◆50話 夜話◆◆


「片付けよし。清掃よーし。本日もお疲れ様でした!」
「「「お疲れ様でしたー」」」
『お…つか…れーさま』

 日が落ちてアマセが締めの挨拶を告げると、三日目にして幽霊までもが反応する。

「もう少し話せたら、名前とかも聞けるかもだねぇ」
「イズナもう、勝手にゆーさんって呼んでるけどもねぇ。また明日~♪」

 ユルールの隣で幽霊に手を振って退室するイズナを先頭に、一人二人と元倉庫を後にしていく。
 ただリーモニンだけが幽霊の姿を見つめたままだ。

「どうかしたの?」
「とくには…気が向いたので、もう少しだけ見ていこうかと」

 また霊体クッキングが開始されいるが、この三日間に見慣れており特段変わった様子はない。

「ふーん」
 納得したのかしないのかスウィ~トは壁際に寄せた椅子を二つ引きづって来る。

「何のつもりです?」
「自分も見てようかなって。こう手つきにしても眼差しにしても半端じゃないよねぇ幽霊さん。本気が宿ってる」
「あなたと話す気分ではないのですが?」

 並べた椅子の片方にどっかと座ってしまった男をじろりと睨むが、まるでこちらを見ておらず気づくそぶりもない。
 かといって立ち去るのもなんとなく負けた気がして、リモも椅子へと腰掛ける。

「まあ、本気なのでしょう。恨みつらみではなくこんな目的で幽霊になるくらいですから…」
 自らが使役するコープスフライは怨念によって宿縁を括り付けたものだ。
 魔界で村々を襲いながら権勢を保った首狩りの一族として、現世にしがみつく霊とは例外なく怨恨の産物であった。

「随分努力したんだろうなぁ。生前に会ってみたかった」
「工夫や技術はまだまだかとも思いますが…」

「厳しいなあ…やっぱり研鑽に使える時間の差が魔族とじゃ圧倒的に違うから?」
「かけた時間だけでどうにかなると考えるのは浅はかでは?」

「そっかー。リモは才能にも恵まれてたり?」
「……そのまま会話を続けるその態度が、生意気で腹立たしいわ」
 まるで変わった様子を見せないドワーフの横顔を睨みつけてやる。
 この場で殺してしまおうかという本能を押さえつける間も、スウィ~トは幽霊を見たままだ。

「いつ気づいたのでしょう?」
「ボクやざらめの姿を追ってるであろう首の動き。調理内容の検討に集中してる時の口調と声。初日の夜に魔族かもと助言があった事。昨日の夕方のクッキーの時に持ち出してきた蜂蜜がトロ・リリプ村のやつだったのは、隠す気ないのかなとちょっと思ったり♪」

 指折り数えながらすらすらと述べられて、視線を隠すベールの下で悔し涙を滲ませる。
 確かにいつの間にか油断していた!
 思いのほかマグロスウィーツの探求が興味深くてあれこれと真剣になっていたのだ。

「それでどうするおつもり? 二人だけの時に口火を切ったからには意図があるのでしょう」
「うーん、微妙? ただまあ戦いにならないだろうなって事は計算してる。ユルール達をはじめ多勢に無勢でしょ」

「それは言うまでもない事。けれど……あなたのそのぬるい態度は何なのですっ」
 ぐぎっと横幅の広いドワーフの顔を両手で挟んでこちらに向かせると、予想外だったのかぐえっとガマの如き呻きを漏らす。

「い、いてぇ~」
 捻った勢いが強すぎたのかスウィ~トは涙目。思わずリモの留飲もちょっぴり下がる。

「ぬるいのはまあ、そういう生き方だからってのもあるけど、キミ今回の事結構真剣だったじゃないか。だからまあ、スウィーツ仲間意識っぽいのが、ねぇ?」
「気持ち悪い。何なのその慣れ合い思考は」

「ぐっ。じゃあそっちは何なんだよ。アストルティアの民の幽霊の心残りにご執心なのは…」
「正体を隠すために仕方なくやっていたことです」

「それは絶対に嘘だねっ!」
 顔を掴まれたままのドワーフは唾を飛ばしそうな勢いで言い切った。
 距離の近さに気づいて慌てて手を放し、椅子ごとがたんと後ずさるリモ。

「あっちこっちを食べ歩いて、たくさんのパティシエにも料理人に出会った。アイシスだって結構な腕をしてる。そういう人々が調理に向かい合う時、誤魔化しは消えてなくなる。この数日リモもそうだった。魔族はそうじゃないとは言わせない程に、だよ!」

「か、菓子を作るのに手を抜かないのは私のプライドの問題だ。正体を隠すためにというのと両立するぞ」
「ボクが気付くほどにボロ出してたじゃないか! 主目的はマグロスウィーツになってた!」
「しつこい! 異種族の、しかも食うだけの男に私の心など分かるはずはない」

 気づけばお互いがお互いに詰め寄って睨み合う。

『……』
 そしていつの間にか手を止めた幽霊が、二人の様子を見つめていた。
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