DQX及び蒼天のソウラの二次創作。
独自解釈など有りますので公式との齟齬もあります。
大丈夫な方は読んでみてね!
なお1話は2019/06/23の日誌からで、基本は毎週日曜日に更新してます。
◆◆52話 挑戦にしよう◆◆
「一体何の話なの」
困惑したリモの漏らす呟きにスウィ~トは真顔で言う。
「リモから見てボクの格が下だと感じるところだよ。他にある?」
「は? 本当に急に何を言って…」
「バーウェンの話が信じられないのはボクが信じられない…とうか認められない相手だからかなって。だったらまあ、そこを改善すれば何か変わりそうだなーって、今思ってる」
「改善? ふふふ…それこそ思い上がりでしょうう。あなたごとき」
「でも、不思議な事にボク達が一歩先んじてるんだよね♪ レシピの封印だって両方揃えたら解除できるところまで来てるんだぞ」
「なっ!?」
突きつけられた事実にさすがのリモも息を呑む。
そこを逃さずスウィ~トは続ける。
「さらに言うとバーウェン達は特別な竜の卵を求めてレンダーシアに渡ったんだ。ボクらはそれを追うんだけど…ねぇリモニーザ、競争しないかい?」
またしてもの突然の言葉に、リモはすっかりその意図を量り兼ねて言葉に詰まる。
「さっき幽霊さんが言ったでしょ? 菓子は幸せをつくる。そのことで喧嘩なんてしちゃだめ! すごくいい言葉だって思うんだ」
キョトンとする幽霊に笑いかけてから言葉を続ける。
「だから殺し合いなんてもってのほかだし、怒りを抱えてそっちの鼻をあかしてやろうってのも、ちょっとカッコよくないかなって」
ぽりぽりと頭を掻いているのは照れ隠しなのか、閉口したリモと対照的にその口はよく回る。
「だから正式にここで挑戦状を叩きつけて、偉大な先人の目指したスウィーツをどっちが先に作れるかって勝負にしたら、後ろめたさも放り捨ててリモ達と“対等”にやり合えそうだなって考えた。だから競争ってわけ」
言いたいことを言い切ったのか、いつの間にか握り締めていた拳から少し力が抜けて、ふうっと大きく息を吐く。
「そちらの勝手な理屈に付き合う義理があるとお思いかしら?」
「思ってないよ」
即答。そこには一拍の迷いもない。
「でも、行動して、伝えないと何も始まらないしね♪ こっちはまあ、のらりくらりとなんとかいなしてこの勝負に勝つつもり。そうしたら格下だって思い込んでる認識だって変わっちゃって、さっきの話だって信じる気になれるかもよー?」
「どこからそんな思考と余裕が湧いて出たのです」
まるで荒唐無稽なおとぎ話にでてくる宇宙人にでも遭遇した気分になって、リモは胡乱げな目を向ける。
「幽霊の言葉で思い出したんだよ。ボクはお菓子とその幸せを愛するスウィ~ツ大好きっ子なんだ。あの幼い日に異界の魔女がボクをそういう存在にしてくれた。それに報いるには…相手が魔族だろうと何だろうと、幸せに近づく方法を探さなきゃってね」
「つくづくよく喋る男ですね。ならその言葉グランドタイタス号を降りても貫けるのか見ものです」
リモニーザはそれだけ言うと、幽霊とスウィ~トに背を向けて歩き出す。
「お休み~。また明日~」
『また…あした……』
まったくの日常的な就寝の挨拶に、荒々しくドアを閉める事で返事をしたリモにスウィ~トは苦笑いして、へなへなと座り込む。
『ど、どうし、た?』
「いやー。正直一対一とか余裕で殺されちゃう相手だから、大丈夫と思ってても怖くって~。あははは、意外と真面目に話を聞いてくれてよかったよー」
『が、がんば…た?』
二人のこれまでなど知る由もない幽霊が戸惑いぎみにドワ男を労うと、スウィ~トは床に大の字に体を投げ出す。
(ああ、そうだ。アイシスにもざらめにも伝えなきゃなあ。先走ってボクだけで啖呵切っちゃったし…でも、なんかすっきりした。きっとこれでよかったんだよね。魔…じょ…さ…)
そうして懐かしい魔女シュガーの優しい微笑みを瞼の裏に浮かべて、スウィ~トは寝落ちするのであった。
『風邪…ひく、なよ……』
幸せそうなドワーフの寝顔に、一言声をかけて幽霊はまた調理過程の再現をくり返し始めていた。