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トロける5000年

ワッサンボン

[ワッサンボン]

キャラID
: XG969-178
種 族
: ドワーフ
性 別
: 男
職 業
: 武闘家
レベル
: 122

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ワッサンボンの冒険日誌

2020-11-15 22:44:33.0 テーマ:その他

甘々の冒険者達『63話・敵対』(DQX二次創作)

DQX及び蒼天のソウラの二次創作
独自解釈、公式との齟齬もあり!

◆◆63話 敵対◆◆


「侵入に障害」
 現地につけばそれはすぐに目に入った。
 シロイロが伸ばした手が墨を流したような黒い空間に接触すると同時に火花を散らす。

「案内役の出番でございますね。異空間といえどこの土地に存在するならば、道は開けましょう」
 ジョイフーの部下オノレフは懐からルビーのような宝石を取り出す。

「アビスジュエル?」
「を改造したものでございます。ジョイフー様が監視任務をするにあたりココラタ近辺の移動を容易にするため授かったものの一つです」
 説明を終えてオノレフが念を込める。

「主代理代行様。希薄エリア発見」
 シロイロの指さす先には薄墨の先に畳敷きの屋内が見えている。

「急ぎましょう。長く開くのは難しい」
「了解」
 シロイロが、リモニーザが、最後にオノレフが飛び込んでいく。


(だがどうすればいい? レシピの確保は必ず成し遂げる。その上で…あいつを置き去りにして怨霊の餌にする……そう事がうまく運ぶだろうか?)
 リモニーザの心に不安が過ぎる。

 それはこれまでさんざんに振り回された経験からの怯えなのだろうか?
 それとも…それが本心からの望みであるかという迷いからなのだろうか?
 まるで二人の自分から同時に問いかけられるような歪みが心を乱す。

「でも…そのまえに、よね」
「なにかおっしゃいましたか?」
 リモニーザの呟きにオノレフが首をかしげる。

「いいえ、なんでもないわ」
 平静を装い短く答える。
 だがジョイフーの部下たるオノレフが善意の案内者であると信じる程、リモニーザも呆けてはいない。
 そのわずかな動きの先を制する。

 後方に続くオノレフの握ったタクトに魔力が満ちる刹那。
 突如真横へと体を交わしてその目を欺く。
 己が意図に気づかれたオノレフは舌打ちをして翼を広げ、駆け抜けるままの勢いで空中へと逃れる。

「魅了の魔力を不意打ちに使おうとするお方にしては思い切った行動。上手く避けられましたわね」
 横なぎにしたスプーンの縁が刃の輝きを放つ様に冷たい汗を感じながらオノレフは距離をとる。

「あなたに褒められたところで1ゴールドの得にもなりませんね。大人しく死んでもらえませんでしょうか?」
 言葉に続いて短い詠唱。集った魔力が熱へと変換され燃え上がる。

「メラゾーマ!」
「マヒャドっ」

 炎と氷の呪文が炸裂しあい両者の間を水蒸気が分かつ。

 相殺……ならば火力で上回りましょう。天井すれすれまで身をひるがえし、追撃のヒャドを自由落下で躱しながら自らに眠る魔力回路へと意識を集中する。

「魔力覚醒っ」
 墜落寸前で開眼し、受け身をとって転がりながら振り下ろされる巨大スプーンの斬撃をやり過ごし再びオノレフは横になったままで掌を突き出して呪文を唱える。

「メラゾーマ!!」
 活性化した魔力回路が先ほどとは比べ物にならぬ豪火球を生み出しその手より放たれる。

 そのまさに瞬間、その腕があらぬ方向へと捻じ曲げられる。
「ぎゃあっ!!」

 豪火球が天井の梁を圧し折りながら燃え広がるのと同時に、痛みが、流血がその腕を侵食していく。
 何があったかを、炎の光を反射し、血の糸を引きながらシロイロの手元へと戻る連刃が雄弁に語っていた。

「習作とは言え…さすがに大魔王様の創造物ですね」
 なんとか立ち上がり口を開くオノレフにリモニーザの視線が突き刺さっている。

「その大魔王様の作品ごと私を消したいのかしら? あなたのご主人様は」
「ジョイフー様は未来を見ておられる。これから生み出される更なる芸術をです。シロイロはナナイロが創られた以上、そう惜しくもないのでしょう」

「へえ、そうなの」
 頭の片隅でちりりと火花が散る。
 ああ、これは怒りだと冷静な自分が認識している。
 シロイロは大魔王様より師匠が預かり、そのままさらに私が預かっている。

 だけ、といえばそれだけのこと。
 だがこの怒りが、もはやそれだけの存在ではない事を示している。

「私の命を狙った上に、シロイロも巻き添えにするつもりとは、許せませんね」
 殺気と共に肉薄するリモニーザの速力に、オノレフも覚悟を決めて傷ついた腕に魔力を込める。

「はっ」
 その腕を切り飛ばして勢いを殺さずに回転、巨大スプーンは首狩りの鎌となりオノレフの命を刈るはずだった。

「ぐぐぐ。その腕は土産です。このダンジョンで野垂れ死ぬがよいでしょう」
 声だけを残しアビスジュエルの闇へとオノレフは消えていく。

「逃走した」
「構いません。レシピを残してはいけませんからね」

 とてとてと近づいてきたシロイロの頭を撫でながらリモニーザは断言するのだった。
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