DQX及び蒼天のソウラの二次創作
独自解釈、公式との齟齬もあります!
そういうのが苦手な方は避けてくださいね。
◆◆64話 合流◆◆
「食料もだけど…まほうのせいすいもあと三本だけかぁ」
血に汚れた頬を拭おうとして思ったより深い傷に触れてしまい、あ痛っと声を漏らす。
ららぁ……。
どこかにやけた目口が基本であるスウィートバッグのざらめが、その印象をくつがえす様な切ない声で身を寄せてくるのは、それだけ心配してくれているのだろう。
「疲労、寝不足。体力と魔法力の回復も悪い…。今3日目?」
「かなー。そもそもちゃんとした時間が流れてるのかもあやしいけどね」
打ち据えられて痣のできた上腕にやくそうを張り付けて、包帯代わりの布切れでぐるぐると巻いていくアイシス。
ともに回復呪文を使える二人だが、手間を惜しむわけにはいかない。
「ダンジョンに終わり。あると思う?」
「うん、あるとは思う。たぶんだけどあの時光ってた木づち、あれが終点。この迷宮の核じゃないかな」
恨みなどが力を発揮する場合には、魂そのものが残るものと、物品にこびりつき集積されるものがある。前者の対応が古き時代からの踊り子たちで、後者を鎮めるのが天地雷鳴士たちだといった話を、実家の修業時代に聞いた覚えがあった。
「そこに辿り着ければ…?」
「何とかなるといいなぁ。悪霊とか怨霊とかを払う修行とか聞きかじった程度だしボク」
世界の菓子を巡る道中で身を守るために鍛えはしたが、踊り子を目指していたわけでないスウィ~トスター☆は困ったように笑うしかない。
ららぁっ!!
気配を察してとびはねるざらめの視線の先では、舞い散る落ち葉のように植物系モンスターのまだらイチョウが降り積もり始めていた。
黄色く染まった掌のような葉には単眼と牙の並んだ口。茎も幹もなく根のように生えた複数の足は下駄を履いて、時には腕のように振舞い下駄を打ち合わせて威嚇してくる。
カンカンカン。
木の打ち鳴らす音が次々と増えていく。
「また物量……」
「簡単には死んで欲しくないってのがおぞましいよね」
二人と一匹は互いの間合いを調整して、負担を分散できる陣形をなす。
っ!!
っ!!!
っ!!!!
それを生意気だとでも感じたのか、まだらイチョウ達が自身を鼓舞しテンションを上げていく。
「たとえ甘くない戦闘でも、未だ見ぬ甘味を残して死ぬわけにはいかないよ!」
雪崩をうって襲ってくる魔物達に鎌を突き付けてスウィ~トは吠えた。
二つ前がまだらイチョウで、さっきはくさった死体。
今は……こいつは…えっと……ミニデーモン!?
幼子が角と羽の生えたきぐるみを着たような可愛さすらあるその魔物が、思いっきり息を吸っているのを見てスウィ~トに怖気が走る。
疲労で止まりかけた思考と認識が総動員されて身を投げだすように回避するが、噴出された氷雪輝くブレスが半身を苛む。
あ、これやばくない?
足に力が入らずどっとそのまま倒れる。耳に響くのは嬉々とした呪文の声。
チリチリと空気が焦げる炎の気配がひどくゆっくりと感じられる。
「不本意ではありまけど、お邪魔しますわ」
何気なく家に訪ねてきたような日常のトーン。
にもかかわらず彼女が振り下ろしたのはギロチンの如き鋼の匙。
ずぶりとエッジがミニデーモンの首筋に沈んで、呪文を唱えながら首が宙に舞う。
「リモニーザ!?」
「焼き殺されようとしているなんて…一番の悪手ですわよ」
心底驚いた顔のスウィ~トに、眉根をきつく寄せて不満顔のリモニーザ。
「え、手助け?」
さらにはシロイロがアイシスを取り囲む一団に踊りこみ、包囲をこじ開けていく。
「あ、そっちは……まあ、今回はいいでしょう」
戦闘に介入時、確かにドワーフだけを助けるとは言い伝えなかったのだしと一人納得すると、動揺する残りのミニデーモン達に向き直る。
「とりあえず…あなた方は邪魔です」
静かな宣言とは裏腹に、リモニーザの暴力と魔力は嵐の如く吹き荒れたのだった。