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トロける5000年

ワッサンボン

[ワッサンボン]

キャラID
: XG969-178
種 族
: ドワーフ
性 別
: 男
職 業
: 武闘家
レベル
: 122

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ワッサンボンの冒険日誌

2020-12-20 21:10:48.0 テーマ:その他

甘々の冒険者達『68話・怨み重ねて』(DQX二次創作)

DQX及び蒼天のソウラの二次創作です。
設定や人物に独自解釈や表現がありますのでご注意を~。


◆◆68話 怨み重ねて◆◆


「……」
 呼吸を止めたオノレフを見下ろしてジョイフーは無言であった。

 異質な重い空気が漂う屋内は、間違いなくシノバスの迷宮である。
「なんやこれ……。大魔王様の貴重な時間を食いつぶす害虫をぷちっと駆除するだけのことやったやん?」

 なのに気が付けば本拠地から敗走し、部下が一人死んでいる。
「はら…立つなぁ」

 ぽつりとつぶやく。言葉に怒りは滲まなかった。
 その全ては腹の中で煮えくり返り、瞳にのみ怨恨の暗い炎が燃えていた。

『おかしいよなぁ』
 篝火に引き寄せられる羽虫のように、迷宮の主であるシノバスが傍らにぼうっと姿を現す。

『我々こそが正しいのになぁ』
「正当な怒り…いいや、裁きをうけるべきやねん。あいつらが」
 二つの怨念が互いを補完し合うことで恨みは強固になっていく。深く重く、どす黒く……。




「うえぇ。なんか空気が苦い気がする」
 スウィ~トが不意に顔をしかめたのを見てアイシスは抜剣する。
 空中に毒や胞子が撒かれた様子はない。とすれば危機を告げる勘なのだろう。

 カァンッ!!
 勢いよく襖が開くと同時にジョイフーが大筆を横一文字に薙ぐ。勢いのままにほとばしる大量の墨が帯となってそのままスウィ~ト達に襲い掛かる。

「せぇいっ!」
「とやっ」
 アイシスの二刀が縦に切り裂き、抜剣と同時に展開されて刃の鞭となったシロイロの一閃が上下に斬り分ける。

「自らやってくるなんてイズナが何かいたずらでもしたのかしら?」
 分断されながらも存在を失わない墨に危険を予測して、軽口を叩きながらリモニーザは氷針呪文を撃ち込んで凝固させていく。

「けっ。この程度の不意打ちでやられてもおもろないか……」
 ジョイフーがつぶやくと、ゆらりとその横にシノバスの怨霊が現れる。

「え、それ!!」
 だが今までと大きく違う事があった。スウィ~ト達の視線が集う先、シノバスの手には例の木づちが握られている。

『この手で粉々のぐちゃぐちゃにしてやるぞぉーっ』
「水墨術…積墨邪法・終の濃筆」
 シノバスの叫びに応じてジョイフーの大筆の先端が全てを呑み込むような黒へと染まる。
 身構えるスウィ~ト達の注目の中、勢いよく振り上げられた筆先はべったりと木づちを黒に塗りつぶす。

 幾度も幾度も重ねた墨が厚く深い黒に到達するが如く、積み重ねられたのは幾重もの怨み。
 墨はシノバスをも黒く染め上げ形を変えていく。

「ブラックチャック?」
 ずんぐりとした黒い二頭身が、頭頂部の尖った白い目だし頭巾を被ったように見える魔物で大きな棘棍棒を振り回す。
 それに酷似した姿のシノバスはそのまま、ずむりずむりと体積を増やしていく。

「いやいやいや! おにこんぼうよりでっかいよこれ!」
「これほどの変化に耐えられる存在を創造するとは、さすがですね」
 驚愕するスウィ~トとは対照的にリモニーザは感心する。

「ですが……私の命も師匠の大願も終わらすわけにはいきません」
「来ます」
 シロイロがつぶやくと同時に共に巨大化した黒の木づちが天井を叩き崩しながら振り下ろされる。

 前衛を支えるシロイロとアイシスが左右に身をかわす真ん中で、畳をめくりあげ床を砕く衝撃が足元を震わせる。

「死ねやこら! くそおんなぁっ!!」
 その隙間を駆け抜ける勢いのまま大筆が振り下ろされ、がぎんと衝撃音をならして巨大スプーンと交差する。

「武器だけ見ればちょっと面白いのに!」
「馬鹿な事を言っていないで、シノバスを制しなさいな! こちらは此方の因縁です」
 スウィ~トを叱り飛ばしてジョイフーと睨み合うリモニーザ。

「救援…」
「シロイロもっ! そちらの相手でいいですから」
「なめてんのかこらっ!!」
 ギリギリと上から力で膝を折らせようとジョイフーが圧を強める。

「頼りになる援軍は他にもいるのよ」
 にこりと微笑まれ虚を突かれたジョイフーの足元をざらめの扇が思いっきり薙ぎ払う。
 威力はたかだか知れたものだが僅かにずれた力の方向に合わせて、スプーンが傾けられると一気に大筆が滑り出す。

 スカートを翻してブーツ底で腹を蹴り飛ばし距離を取ると、転がるようにざらめがその横に並び立つ。
 うん?立つ?

 ららっ!!
 それはともかく一仕事やってやったぜと得意顔のざらめ。
 ここまでの戦いですっかりリモニーザやシロイロの手助けにも慣れていたのだ。

「私達はこのままお暇させてもらうわ」
「いいや、この世からお暇してもらうで」
 二人の視線は再びぶつかり合う。

 ここが決着の戦場であることに疑う余地は毛ほどもなかった。
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