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トロける5000年

ワッサンボン

[ワッサンボン]

キャラID
: XG969-178
種 族
: ドワーフ
性 別
: 男
職 業
: 武闘家
レベル
: 122

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ワッサンボンの冒険日誌

2022-07-28 22:13:08.0 テーマ:その他

Neco Roman She【05】

DQ10と蒼天のソウラ関連の二次創作です。
独自解釈、設定の齟齬、改変を含むものですのでご注意ください。
登場するキャラクターの言動についても私の妄想であり公認ではありません。


◆◆◆はじまり(5)◆◆◆

 誰かを救うために死者の尊厳を蔑ろにする魔物。
 何もわからぬままに決着を望む生ける屍。

 納得がいかなかった。情報を精査し現状を把握。しかる後に行動する。
 それがプロの仕事の第一歩だとフツキは考える。

 いや……違う。これは俺がそう思っているだけだ。
 プロの仕事人だ、エージェントだと評価される己の中の『自由な思い』から来るものだ。

「どちらの言葉にも納得できないな。選択肢が少なすぎる」
 そしてその思いに従うからこそ彼は冒険者であり続けるのだ。他の何者でもなく。

「急に割り込んできてなに言ってるにゃ!?」
「そちらの抗議を聞くのはまた後だ」

 フツキの言動にドワーフは説得ではなく実力を行使すると決めたようだ。
 地を蹴り先ほどの彼の疾走に劣らぬ速度で距離を詰める。

 だが種族としてのリーチの差と一振りの短剣の長さは、無手の相手にとっては果てしなく遠いものだ。
 腕を畳んで刃の突きを意識させてからフツキの前蹴りが飛ぶ。

 寸でのところでスウェーバックしたかと思うとフツキの蹴り脚の戻りを盾に身を低くして加速する。
 逆手に持ち替えて短剣を上から振り下ろすが前傾姿勢から身を投げ出して体をひねり、さらには突き出した腕で刃の軌道を弾き、フツキの腹に頭突きを食らわせる。

「反応がいいなぁ」
「そっちこそ、思いっきりがいい」

 小さく跳ねて衝撃を殺したフツキは相手を制圧すべく、一方でドワーフもおそらくは昏倒を狙って攻撃を繰り出す。
 奇妙でそれでいて精緻な超接近戦闘の中で、フツキの頬を一筋の汗が流れる。

(あのエルフの方が押されてる。く、これどっちかといえばエルフが勝った方がいい気がするのに)
 魔法の使い手であるカロリーンヌは今や傍観者だった。
 二人をまとめて攻撃して漁夫の利を得たとして……勝利と引き換えにやっと手にした手駒を無に帰すことになる。

 もう一度時間をかける余裕なんてない――。

 懐の呪符に魔力を与えながらカロリーンヌは言い放つ。
「そこのエルフ! なんとかアタシが近づけるようにしなさい。少しの間でいいから! それで何とか仕切り直しにしてみせるわ」

「了解した。四番、イオ」
 短く答えると同時に最短最小限で魔法を行使。ズボンの革ポケット内で極小の指向性爆裂呪文が弾け、聖なるナイフが飛び出す。
 麻痺や毒、睡眠などが通用しないアンデットのような敵を想定した用意の一つだった。

「その焦りが若さか」
 空いた手に収まるはずの聖なるナイフが払い飛ばされる。伸ばした手が空を掴んだ一呼吸の隙をついてドワーフはもう一方の短剣をも奪い取っていた。

「ちょっとーっ!」
「ぐむっ」
 駆け寄って来ていたカロリーンヌの悲痛な叫び。フツキのくぐもった声。
 ドワーフの鋭い蹴りが腹部に突き刺さっていた。

「さて他者の死に手を出したからには、自分の死も覚悟の上だろうね」
 崩れ落ちるフツキから一瞬、意識をカロリーンヌへと向ける刹那。それは強烈な光と共に爆裂する。

 やられた!とドワーフが理解した時には遅かった。
 奪い取った短剣の柄には隠し収納があったのだろう。このエルフはその僅かな空間に先ほどの呪文発動を隠れ蓑に、新たに爆裂呪文を精製したのだ。奪われることを見越して。

 至近距離で光と衝撃を受けたドワーフに取り付きフツキは叫ぶ。
「長くはもたない! こっちだ声を辿れ!」
 呼びかけに応じて必死に近寄る彼女。それに報いるかのように力を振り絞るフツキ。

「アタシの手をそいつの額に誘導してっ!」
 呪符を手にしたもふもふの腕を何とか言うとおりに導いてやると、カロリーンヌが呪言を唱える。

「お……んむぅ……」
 途端、額に呪符を張られたドワーフは静かに横たわる。

「聖別された短剣よりは、そっちを奪ってくれると思っていた……」
 状況を切り抜けた事に安堵してフツキは誰にともなく呟く。

「やったわ! コントロールを取り戻せた! アナタやるじゃない!!」
 興奮気味に叫ぶカロリーンヌは飛び上がって喜ぼうとして、エルフの手が今だ自分を掴んでいる事に気づく。

「あの? もう放してくれていいのですけれど?」
「今のところ……」
 あっと声を上げた時にはすでにカロリーンヌはフツキに組み伏せられていた。

「俺から見てそちらは死者を操るモンスターだ。説明を求めるのは当然だろ」

 月光を背に表情の見えないエルフ。彼女の恐怖体験はまだ終わっていなかった。
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