DQ10と蒼天のソウラ関連の二次創作です。
独自解釈、設定の齟齬、改変を含むものですのでご注意ください。
登場するキャラクターの言動についても私の妄想であり公認ではありません。
◆◆◆それぞれ(4)◆◆◆
「猫島が襲われたって。それで大丈夫だったの」
少し気弱そうな少女の顔にありありと不安と衝撃が見て取れて、青と白のしましま模様のハムを思わせる猫魔物ミャルジは慌てて言葉を継ぐ。
「心配いらないでヤンス。リベリオの旦那がマンマー様もジュニア様もしっかり守りきったでヤンスから」
「ソーミャにもオレの活躍を見せてやりたかったニャ」
少女から見れば壁のように大きな猫魔族のリベリオがふんぞり返る姿に、ソーミャは胸をなでおろす。
ソーミャはウェディの少女だった。
運命のいたずらで猫島の支配者マンマーの一人息子ジュニアを保護し、ひと悶着の末に猫魔族達と縁を結んだ彼女はマンマーからの信頼も厚かった。
「もう大丈夫なんだよね」
「マンマー様はまた猫島が襲われることはないと踏んでるでヤンス。でも島の皆が不安でいっぱいだから、攫われたお客さんを助けるために猫手を沢山は割けないとお考えでヤンス」
オレとミャルジが居れば大丈夫なのにと不平を漏らすリベリオを宥めながら続きを聞いていくと、マンマーは彼らに冒険者の手を借りるように、そしてそのためにソーミャを頼るように指示したらしい。
「確かに二人は冒険者の酒場には入れないもんね。うーん」
納得しながらも少し考えこむソーミャに、リベリオは不機嫌そうだ。
「どうせまたあいつが絡んでくるのニャ~。オレは顔会わせたくないのニャ」
「もう、またそんなこと言って。でも、ヒューザ兄ちゃんはクエストでしばらく来れないって言ってたばっかりなんだよ」
にゃは~っとあからさまに笑顔を浮かべるリベリオだが、ミャルジが心配そうにソーミャを見上げる。
「う、うん。大丈夫。私だって出来る事は一人でやれるから。手伝ってくれそうな人を探してくるから、見つからないように待っててね」
ソーミャの住むジュレットの町は近隣では大きな町であり冒険者達の集う酒場もある。
決意を込めた瞳で彼女は町へと引き返したのだった。
「おつかれさまでした」
その日限りの簡単なクエストのためにご一緒したパーティ仲間に深々と頭を下げると、彼女達は朗らかに手を振って去っていく。
「ん~。大きな怪我もなくてよかったです」
完全に酒場の扉が閉まってから頭を上げるとホロナはほっと息を吐いた。
ひとまずの収入と達成感に満たされていると、扉が開いて入れ替わるように少女がおずおずと入ってくる。
ウェディであるところを見るにこの町の子供だろうか。
冒険者をするには幼すぎるように見えるし、キョロキョロとあたりを見回す姿は頼りない。
迷子のペットを探して欲しいとかかしら?
気になりだしたら次々と疑問が湧いて、いつの間にかじっと見つめていたらしい。その子とばっちりと目が合った。
そこからの彼女は先ほどまで感じていたイメージとは違っていた。
しっかりとした足取りで近づいてくると、まっすぐにこちらを見つめて問う。
「お姉さんも冒険者の人ですか?」
その紫色の瞳には小さいながらも意思の強さが輝いているように見える。
ホロナはその真剣さを感じ取って、しゃがみこんで視線を合わせるとその通りですと肯定する。
「お姉さんは猫が嫌いだったりしますか?」
変わらず真剣な瞳。やはり大切なペットを探して欲しいのかもしれない。
「犬も猫も、もふもふしていて好きですよ」
だがホロナは忘れていたのだ。この町での猫という存在についての捉えられ方を。
「私は僧侶のホロナです。お友達が困っているのでしょうか?」
問われて少女の顔はパッと明るくなった。
「ごめんなさい。私はソーミャです。そうです。友達の手助けをしてくれる人を探しています」
ソーミャは一度キョロキョロと周りを確かめている。
しかし今ここにいる冒険者は自分の他にはウェディの男達二人組だけのようだ。
「ついてきてくれませんか?」
厳つい男性二人に頼むのは心細いのだろうと察して、そして今は懐が温かい事も手伝って。
「はい。私でよろしければ」
ホロナはつい微笑んで頷いてしまったのだ。その先に待っているのが猫魔族であるとは夢にも思わずに……。