DQ10と蒼天のソウラ関連の二次創作です。
独自解釈、設定の齟齬、改変を含むものですのでご注意ください。
登場するキャラクターの言動についても私の妄想であり公認ではありません。
◆◆それぞれ(6)◆◆
「あっ」
自分が頼ったお姉さんに何も説明できていない事。
ソーミャは慌ててごめんなさいとホロナの手を握り返すと、現れた男達に顔を向ける。
「ホロナお姉さん。それにロマンさん達も冒険者なら、リベリオ達の話を聞いてくれませんか」
ぺこりと頭を下げるソーミャに倣ってミャルジが頭を下げる。
そうなると渋々ながらもリベリオもちょっとだけ頭を下げ……たかな?という程度に角度をつけた。
「よし、話を聞こうじゃないか!」
ワクワクを隠さない顔で言うとロマンはここじゃなんだからと、一同をある場所へと案内する事にした。
「散らかったままで悪いが、適当に座ってくれ」
ロマンに促されて屋内へと入ったソーミャ達は、大きな窓から差し込む太陽の光と、それを反射して輝く宝石を散りばめたような景色に息を呑んだ。
この建物の主であるロマンの言葉通り、室内にはあれこれと箱が積み上げられて、今のところ家具といえるものは大きめのテーブルと数脚の椅子のみだったが、見下ろすビーチの景観が客人達の目を奪っている。
「おお、食いつきいいがいいねぇ。ちょっと値は張ったがここを借りてよかったかもな」
その様子ににっこりと笑うロマンの言葉にソーミャが目を丸くしている。
ジュレットの町に住む彼女は、ここから眺めるビーチを知っていた。
住人達に『隠し海岸』と呼ばれているプライベートビーチであり、そこを展望できて直接降りていけるような家屋がとんでもない価値を持つことを。
「ホロナさん……冒険者って、そんなにお金持ちなんですか」
「え? いえいえいえいえ。そんな方はごく一部ですよ!?」
震えながら小声で尋ねる少女に、並んで圧巻の景色を見つめていたホロナがぷるぷると首を振っている。
「彼は冒険者であり、かつ社長だからな」
「そこは棟梁って言ってもらわなきゃロス殿」
分かりやすさを優先しただけだと軽く謝るロスから視線を客人達に戻してロマンは言う。
「ここは魔法建築工房OZ、平たく言えばちょっと変わった大工さんのデザイン部門用の新事務所予定でな。今はまだ空いてるから、ちょうどよく相談事に使おうってわけだ」
カラカラと気持ちよく笑うロマンは、そのまま適当な椅子を勧めていく。
「おっと、大猫の旦那はそっちの箱が丈夫だから使ってくんな。さすがにちょうどいい椅子がないからな」
「お、おうなのニャ」
その豪胆な朗らかさにリベリオも有無を言わさず座らされて、ソーミャが少し笑っている。
「ここなら邪魔も入らない。先ほどの話の続きといこう」
促したのはロスウィードだった。
「じゃあ、あっしが説明するでヤンス」
椅子からさらにテーブルに飛び乗ったミャルジが、前足から尻尾までを忙しく動かして事の顛末を熱く語る。
猫島が統率された魔物の勢力に襲撃を受け、ねこまどうの一人が誘拐された。
その救出にアストルティアの民、冒険者を頼る事になった。
「それはまた、ずいぶんと思い切った。いやそれだけの意味があったのか」
ウェナ諸島の情勢に詳しいロスウィードはソーミャの顔をちらりと見て、認識をアップデートする。
「まったくニャ。こんなのはオレとミャルジで解決できるニャ」
「えっと、猫島の女王様はとってもしっかりしていて、私の事も諭してくれたり優しくしてくれたりして、だからわざわざ冒険者を頼るように言ったなら、それだけ大変な事だと思う、思います」
態度に不満がありありと現れるリベリオと違って、ソーミャが一つ一つ言葉を考えながら告げていくとミャルジも頷く。
「マンマー様はもしかしたらもしかしたら、もっと大きな陰謀の切欠と思ってるのかもしれないでヤンス!」
ロスウィードとロマンは顔を見合わせてふむと頷き合う。
「ホロナさん。君はどう考える? このクエストを受けたのは君だ。これが何か大きな事件の前触れだとの前提で動くならば、私達の方でも力を貸すことが出来ると思う」
「彼もなかなかコネがあったりするんだ。これがね」
ロスウィードを肘で小突いてロマンが白い歯を見せる。
二人の男の視線を受けて、ホロナは考えを巡らせて……やがて口を開いた。