蒼天のソウラを含む二次創作です。
独自解釈、設定の齟齬、改変を含むものですのでご注意ください。
登場するキャラクターの言動は私の妄想であり公認ではありません。
◆◆ホロナPT(1)◆◆
「てことだそうだホロナ先生。思ったより大事になってそうだ。冒険者の勘が当たっていたな」
「先生はやめてくださいロマンさん」
いやいや、自分にできない事をやってる人間には敬意を込める。現場を取り仕切る立場の棟梁としてロマンはその点は譲れないなと笑っている。
猫島の客人リュナン救出クエストに乗り出した最初の冒険者ホロナは、同行者の言葉に恐縮しながらも真剣な顔で、次の事件の予測についての資料を見つめる。
「不可解な依頼人……」
「ロスんところでは魔物の変装や変化を疑ってる。姿形は様々だが、口調や印象の共通点が見出されてるな」
「すごいでヤンスねー。冒険者ってのは」
テーブルの端に前足をかけて、何とか顔を覗かせるミャルジは感心しきりだ。
ちなみにここは宿屋の一室。面子は二人と一匹だけである。
「リベリオの旦那もこういう部分を知ったら少しは態度が変わるでヤンスかねえ」
「だったら嬉しいかも? でもさすがにグレンの町に一緒には入れないですし」
魔物として目立つその巨体ゆえ、郊外で留守番となったリベリオを思ってホロナの言葉尻が萎れていく。
「そこは仕方ない。切り替えて行こうぜ。後は今夜、予測通りの拉致事件が起こるならこのチームで抑えるってもんだ!」
「そしてこっちが拉致して情報を聞き出すヤンスね!」
キランと瞳を光らせる一人と一匹。
まったく間違ってはいいない。いないんですけどぉ~。
誘拐犯のような邪悪な笑みを浮かべる姿に、何とも言えない気分でホロナは天を仰ぐのだった。
「すまないねぇお嬢さんにこんなに重いものを運ばせて」
背中の曲がったウェディの老人は杖を手に何度目かの礼を述べる。
「オーガの女子にはこれくらい余裕よ。そもそも自分が錬金した鎧だもの♪ きっとお孫さんの身を守ってくれるわ」
月光に照らされて新進気鋭のランプ錬金術師キョロが笑顔を見せる。
「本当にありがたい。外に馬車を待たせてます。そこまで運んでいただければ大丈夫ですわい」
グレンの町と外部を繋ぐ長い橋を二人は進むと、ランタンを吊るした幌馬車が見えてくる。
こんな夜更けに大丈夫かしら?と少し思案するがとりあえず荷物を積み込んでしまおうと、馬車の後方に回り込むキョロの後ろで、老人は張り付いたような笑顔を浮かべて、ぱちんと指を鳴らした。
なんだろう? 振り返ったキョロの耳に幌がめくられる音が届く。
続いて誰かの気配と鼻孔をくすぐる甘ったるい匂い。
「あっくぅ……」
まるで地面に沈み込むように全ての感覚が急速に鈍り、荷物を取り落とし膝をつく。
重く垂れさがる瞼に抵抗しようとする瞳に映ったのはガルバとゴルバ。そして、上から落ちてきたしましまの猫魔物プリズニャンだった。
「なんだ!?」
「こんな所に!?」
驚くガルバ達の顔をべろんとなめまわして、意地悪くにししと笑う姿に、思わずカッとなった二匹が襲い掛かる。
「こっちでニャンス~♪」
よっはっとっと距離を取る姿にウェディの老人、いやシャモドッキは真意を悟ってキョロの元へ駆けるが、一瞬の遅れが明暗を分けた。
「こちらの方は渡せません」
「あっちこっちで人攫い&魔物攫いとはな。ただの大工だってそんな非道は見過ごせねぇぜ悪魔さんたちよぉ」
ホロナとロマンが参戦し深い眠りに落とされたキョロを庇う。
「ンンー! まあ、そろそろ気づかれて当然デスネ。いやいや困ったデース」
腰を伸ばし杖を転がすと老人の姿は見る間にぼやけて、ゆらゆらと漂う魂魄のような魔物が姿を現す。
「アナタ達! ここは町が近いですからね。短期決戦デース! さあ、冒険者諸君このシャモドッキがお相手しますですヨ!」
「ニャハハ、よく言ったニャ! だがぞいつらは前菜。メインディッシュたるこのリベリオ様を見ても、同じセリフが言えるかニャ!!」
どすーんと大トリを貰ったとばかりに飛び降りてきたのは巨猫族の戦士。
戦いの火ぶたは切って落とされた。