今日、私は負けた
戦いに負けた
たったそれだけこと
しかし、この世界では
負け=死
敗者は全て奪われる
財産も名誉も、もちろん命も例外ではない
敗者に未来などない
この世界では当たり前なのだ
そう、だから私は死ぬしかない
そう思っていた
「一緒に行かないか?」
しかし、この魚人(さかなひと)はそう言葉を投げ掛けてきた
そもそものきっかけは些細なことだった
そう、些細な…
語るとそこ果てしなく長くなるので簡潔に説明するならば
私はその日、カジノの巧みな陰謀、罠によって全財産を失ってしまい、絶望に打ちひがれながら帰路についていた
すると一人の男が視界に入った
真の現実など知らない、腑抜けきった締まりのない顔
覇気もまるでなく、その場しのぎで、周りに流され、能々と生きてきた
そんか印象を私に持たせた
…
…許せなかった
私は、私は!悪と戦い、身を、精神を削り平和の為に闘ってきたというのに!
こんな平和ボケしたような存在がいるなんて…!
…気が付くと私はその男に向かって駆け出していた
自分の正しさを、正義を証明するために
この男に現実の厳しさを判らせるために
私は、この男に闘いを挑んだ
…気が付くと私は魚人から治療を受けていた
どうやらお供のスライムベスに1発で気絶させられたらしい
怒りの余り気づかなかったが、このスライムベスはこの魚人の下僕の様だった
まるで視界が定まっていないような、虚ろな目
緩みきった口
締まりのないふやけた顔
なんだこのスライムベスは…
私はこんな、まるでゼリーに目と口を描いただけのような、そんな存在に負けたのか
プライドは砕かれ、体にも力は入らず生きる希望の無くなった私に対し、この魚人は治療を施した
その後の流れは早かった
一緒に旅をしてほしい
それだけのお願い
治療したお礼もしたいし、たまたま暇だったので着いていくことになった
どうやら名前も着けてくれたらしい
「むへへ」
私の名前
とても紳士的で心暖まる名前だった
この、素晴らしい名前に恥じぬよう私はこの魚人の期待に答える
私は心に誓いを立てた
そう、私の新たな人生はここからまた始まるのだ
終わり
書いてる途中で飽きたのでこれで終わります!
仲間が増えたよ!って話でした