アラタの冒険日誌

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　うちで留守番をしているコンシェルジュはヒスイといって、ちっこいめのエルフの女子です。ドラクエ10ＴＶに出ておられる椿バッコスさんによると、エルフ女子のコンシェルを雇うプレイヤーは闇が深いらしい……（否定しにくいな）。雇用時にエルフを選んだのはアズラン住まいだからで、女子にしたのは女子が好きだからです。名前も外見もデフォルトのまま。コンシェル機能が実装されたその日に雇ったんだったかな。

　このエルフ娘は、（どこのコンシェルもそうだと思うけれど）どうもえらく忠誠心がつよい人で、いやいや、わたしみたいなもんにそこまで義理をつくさなくてもいいんだよ、もうちょっと広い世界とか見てきたらどうなんだいと言いたくなったりするのですが、かといってひまを出したら彼女すっげぇ傷つきそうなので、まあ、そのままいてもらっています。

　コンシェルを「なでる」していると、そのうち手作りのぬいぐるみをくれる……という話をきいてから、この小さなエルフ娘を気が向くたびになでまわしていたのだが（というとなんかイケナイ感じだ）、それはハッキリいって、ぬいぐるみを無料で手に入れて美人のエステラさんに献上するためだった。皆さんご存じと思うけれど、エステラがぬいぐるみをほしがるというサブイベントがある。ぬいぐるみって、たっけぇな、頑張って稼いだ金、使いたくねぇな、という、身も蓋もない本心があって、コンシェルからもらえるならばそいつを右から左へ流してしまえという魂胆だったわけだ。

　けっこう長い期間、そういうなでまわしの日々があって、こないだ家に帰ってみると、ヒスイちゃんがでっかいプレゼント包みを抱えていた。またメギスで手に入れたプクランサフランかな、と思っていたら、やっときた、目当てのぬいぐるみだ。「ピョンシェルジュです」と自分で名前までつけている……。

　やれやれ、くれるまでけっこう時間がかかったね。いちおう、どんな見た目かだけチェックしておこうかな、と、何の気なしに部屋に置いてみた。
　置いてみて、ああ、ヤバイと思った。

　なんでかわからないのだけど、ぐっときてしまった。これを捨てるなんて、とんでもない。ヨソの女に横流しなんて、ありえない。

　ほんとうに、なんでなのかわからないのだが、胸を打つビジュアルがそこにはあって、しばらく呆然とした。
　不思議だ。
　なでるの回数が一定の量を超えるとイベントが発生する、ということを最初から知っていた。つまり、わたしは答えを知ってるクイズを解いていたのだ。そのイベントも、中身を見れば結局は、特定の条件がそろうと特定の結果が出力されるというプログラムにすぎないのであって、そんなこともあらかじめ当然わかっていて、単なる作業としてそれをやっていたのだ。

　そのくらい冷めた気持ちでやっていたのに、なんで喉の奥がぐっと詰まるんだ。
　ゲームって何なんだ。
　物語って何なんだ。
　ただ、不思議だ。

　たぶん、その不思議が愛しくて、わたしはゲームをやっているのだと思う。