こないだ、メギストリス1で討伐売りを吟味していたら、「いいねしてくれたら無料」という条件で強ボス4万を配布している人がいて、それおもしろいね! と思いました。
おそらく、いいねを大量にもらうと手に入る称号か何かがあって、それを入手するためにいいねを稼いでいるのだろうと思われた。
討伐って、ゴールドで売ってもそんなに儲からないし、畑の世話を条件にしたとしても、10人くらいに世話してもらえばそれ以上は無意味なんで、結局「タダで配布するのが一番てっとりばやい」という結論に落ち着く。
でも、「いいねを稼げる」というアイデアは、新しい。討伐を配るモチベーションにもつながる。これはいい考えだ、こんど強ボスをひいたらマネしよう。
それからしばらくして、ウルベアロボの4万を引き当てた。いいねを条件に配布してみると、人々がみるみる並んでくれる。タダで配っているのとほぼ同じだから人気が出るのも当然だ。
そうやって、相当いいねを稼いだんだけど、称号が手に入るようなケハイがない。おかしいなと思って、討伐を配りながらグーグルで検索してみたら、「いいねを大量にもらうことで入手できる称号はない」ということが判明した。うそーん。
そりゃそうだ。ちょっと考えたらわかりそうなものだ。
いいねという機能を、「なんの利益もなく、ただ好意を表すためだけのもの」にとどめておきたくて、そうしたはずだ。藤澤さんや堀井さんは。
いいねに報酬を設定してしまったら、いいねが「報酬のためにやるもの」になってしまう。
いいねの内実が、不純になってしまう。
いいねを、いいねという額面そのままに受け取れなくなってしまう。そんなの話にならないよね。
そんなわけで、ちょっとガックリきたわけなんだけど……。
それはそれとして、ハッと気づいたことがある。
「いいねで討伐配布」って、それ自体が楽しい。
タダで漠然と配布しているときにくらべて、あきらかに、並んでいる人の反応というか、テンションがちがうんだ。
並ぶ人のジャンプの回数が多い。「ありがとう!」の飛んでくる数が多い。べつに条件として設定していないのに、自発的に自宅に飛んで畑の世話をしてくれる人の数があきらかに多い。
そして、討伐を受注してから、戻ってきて、もっかい「いいね」を飛ばしてくれる人がけっこういる。
いいねを飛ばせることそれ自体が嬉しい、いいねを飛ばすタイミングを測るのが面白い、そう思ってくれる人がかなりいるみたいなんですね。
あたりまえのように聞こえるかもしれないのだけれど、
人々は「いいねをしたい」と思っているんだと思う。
いいねをしたいって、どういうことなのか。
それは、他人にアクセスしたいという欲求だと思う。
他人に触りたい。影響を与えたい。何かを投げて反応をみたい。
実体というものがないこの世界で、何かに触って影響を与えたという実感がほしい。
いいねをしたい、という欲望は、「世界に触りたい」という欲望と、ものすごく近いと思う。
いってみれば、「淋しい」から「嬉しい」への相転移だ。
だから、「無限にいいねを投げていいよ。討伐のプレゼントもあるよ」。なんていう変わった人が突っ立っていると、喜んでぴんぴん星を投げてしまう。
そうやって「いいね」をうけとるこっち側としても、他人の気持ちにちょっと触った感じがして、ちょっと嬉しいのです。
ちょっとね。
ちょっとなところが、とてもいい。
MMORPGってたぶん、本質的に、ちょっと淋しいメディアなんだと思う。ちょっとの淋しい気持ちを、ちょっとだけ埋めてくれるギミックが、いくつか用意されていて、淋しいのとそうでないのとが小さく行ったり来たりし、それで心を揺らすようにできているんだと思う。