ドラクエ10に初めて入ってきたお客さんは、従来同様のドラクエのつもりで遊びに来ているので、「ネルゲルを倒せるようになるのは数ヶ月後」というわけにはいかない。
だからVer.1.0でネルゲルを倒せる必要があった。
ここまでが前回。
https://hiroba.dqx.jp/sc/diary/231529396884/view/6676541/
●メインストーリー級がもうひとつ必要
だがこれは運営としては大問題となる。
Ver.1.0でネルゲルを倒しちゃったプレイヤーの興味を、1年後のVer.2公開までひっぱりつづけないといけない。
これは正直そうとうしんどいお題だろう。
だからこそ、Ver.1の段階で、新職業を4つも実装せざるを得なかったのだと思う。
何せ、レベルを上げきったら、プレイヤーはやりきったと感じてプレイをやめるから、新しいレベリング要素を逐次投入しないわけにはいかなかった。
外伝クエストも連打して、「新しいストーリーが読める」状況を維持しつづける必要があった。
だが、短編クエストを連打しても、興味をひくには限界がある。
1年ひっぱるためには、「この続きはどうなるの?」という連続的ストーリーが必要だ。
だからVer.1は、1.0で倒せるネルゲルのストーリーと、1.5で倒せる真災厄の王のストーリーを必要とした。
Ver.1の中で、世界の危機を2つ用意し、それに立ち向かう物語を両方実装する必要にせまられた。
でもそれ、そうとう無茶だったんだなあと思う。そのしわよせが、神話篇に全部出ている。
だって、りっきー体制でVer.2を絶賛制作中だったはずですからね。リソースの大部分はそっちに振り分けられていたはず。
●「まだ見ぬ世界」を感じさせるために
だから神話篇は、「いまあるリソースの使い回し」にならざるをえなかった。
王者武具のダンジョンは魔法の迷宮流用、その奥にいるボスは、初期村ボスの再利用にするしかなかった。
藤澤Dは、まだ五大陸しかないVer.1の段階で、「この世界ってとんでもなく広いな」とユーザーに思わせなければならない立場だった。
だって、「この世界全部見た」と思われてしまったら、プレイヤーはプレイをやめる。
藤澤さんは「プレイヤーをVer.2まで連れて行く」という重大なクエストを、取れる手法がほとんどない状況で課せられていたはずだ。
だから、「まだあまり足をふみいれていないマップに向かって、長い長い移動をしいる」という実装をしないわけにはいかなかった。
ようするに「世界の端っこにもういっぺん行ってくれ」と言わざるをえなかった。
もう、当時としても「この移動きっついな」というのはわかりきっていたはずで、それでも実装せざるをえなかった事情があり、作っている側としても気持ちはしんどかったろうな、と思うのです。
(のちになってバシッ娘、メガルーラ、自動ルーラを実装できたのは、バージョンが進んで、世界の絶対的な広さが段違いになったから)
他の方法は、私には思いつかない。
●期間限定であること
この、ひずみをかかえた神話篇を実装できたのは「期間限定クエストだったから」というのがたぶん大きい。
ようはプレイヤーをVer.2まで連れて行くというのが大目標で、それさえ達成できればあとはクエスト自体をクローズする(予定だった)ので、繰り返しプレイやサブキャラでの再読を想定する必要がない。
だから負荷の強いクエストをプレイヤーに強いても、1回限りのことなので大きな問題にはならない。
……はずだったのだけど、のちに「神話篇はクローズしない」ということになったので、「バランスの悪いクエストがめっちゃ連打されてるなぁ」という印象が継続されることになってしまった。でもこれはこれで仕方ないよね。
●紙数が余ったのでついでの余談
災厄の王とエスタークは別人でしょう(と私は考えます)。
もしこの二人が同一人物という設定があるのだとしたら、「エスターク」という名前で登場させたほうが明らかに商業的に有利。そうなってないのは、同一人物でないからだと思います。
おそらく藤澤さんは「エスターク本人を登場させたい」と希望したが、堀井さんがノーといったんじゃないかな。「エスタークは天空編世界の土着の魔王だからアストルティアにいるのは変」といった理由で。
だが、「個人が最大までチカラを極めた結果、エスタークとほぼ同じような形状に進化した存在」なら出していいということになったんで、別個体としてそれを出し、「これってエスタークかな、ちがうかな」ということを想像させるような形にした、というあたりが内部的な事情だと思います。とりあえずこの話は以上です。