2回目。前回はこちら。
https://hiroba.dqx.jp/sc/diary/231529396884/view/7393538/
●もしチャージタイムがなかったら
このゲームの戦闘は「バフかけ前提」の調整になっており、「強力な特技にチャージタイムがある」。
それもまた、「実感としての自キャラの強さ(成長感)」と、「マクロの視点で見たときの自キャラの実際の強さ」を引き離す意図が(も)あると思う。
自キャラにバフをもりもりにかけて、ピーク状態でチャージタイム特技を使うとものすごいダメージがでる。「俺強い」という実感が得られる。
俺はここまで成長した、という、苦労がむくわれた感じになる。
でも、ピークが強いかわりに、チャージタイムがたまるまでや、バフが剥がれたときには低いダメージにおさまる。
プレイヤーキャラクターの実際の強さは、素のときの能力とピーク時の強さとの平均値あたりになる。つまり、実際の強さを抑えつつ、「俺強くなった」という実感を提供できていることになる。
このように「ピーキーに調整する」というのが、前述のジレンマ――「強くしないとプレイヤーが離れていくが、強くするとゲームの破綻が早まる」に対する実際的な解になっている。
そしてそれは、新武器の調整でも同じ。
常に新武器は強力なものにし、毎回買い換えたくなるようにしろ、というのは、自キャラを常にバフ盛り状態にし、チャージタイム特技をチャージタイム特技なしで使えるようにしろ、というのとちょっと似ているかもしれないのです。
●新武器追加にもピークと非ピークがある
新武器追加のときに、当たり武器とハズレ武器があるように設定するとどうなるかというと、ハズレ武器のときには、武器更新をする人が減る。
すると、マクロ視点でみたときのプレイヤー層全体の戦闘力が、前回武器のレベルに抑えられる。
ゲームの運営は、
「常に成長要素(新武器含む)を提供して、成長感を与え続けなければならないが、同時にプレイヤー層全体の戦闘力は抑えたい」
というジレンマを持っている。そのジレンマへの対応となるのです。
「この新武器、なんでこんなに自分のニーズにマッチしないのだろう」
という疑問を持った場合、その「ニーズ」としてイメージしている職業の戦闘力インフレをちょっと抑えたい、というフェイズに入っていると思うのがいい。
単純計算として、キャラクターの戦闘力は、素のパラメータと装備のパラメータできまる。素のパラメータを抑えようとすると、レベルを上げても強くならないという体験になってしまいプレイ意欲をそぐので、装備側で対応するのが理にかなっている。
その装備側の対応も、「買いたい人は装備を買えばその分強くなる」というかたちで、プレイヤー側に選択肢を与えている。
運営にとっては「新武器を買うという選択もありがたいが、買わないという選択もありがたい」のです。
プレイヤー層全体の平均的傾向としては、うまくコントロールしつつ、ミクロな(個人の)プレイヤーが買うか買わないかは各人の自由になっていてスマートなのですね。
●ニッチなニーズに応える
とはいえ、「こんな新武器、誰一人買わねぇ」というレベルの武器を設定してしまうと、本当に誰一人買わず、職人界隈の動きが止まってしまう。
だから、「直接的な戦闘力には影響しにくいが、目先の変わったニーズには応える」というようなかたちで、ハズレ武器を設定している。このへんのあんばいが、私には非常に興味深いし、運営がうまくやっている点だ。
スティックがわかりやすい。
エイルのスティックが明確な当たり武器だ。「もう、みんなこれを買うでしょう」という能力に設定されている。ここがピーキーバランスのピークの部分。ユーザーに盛り上がって下さいといっているところ。
だが、エイルの次のスティックに、「エイルより回復量が高い」性能をつけてしまうと、たちまち回復力のインフレコースだ。
だから、エイルみたいな当たりを実装したあとは、とうぶん、回復量では上回らないスティックを追加していく。
回復量では上回らないものの、ニッチなニーズに応えるような性能にする。
セーラススティックのように、「そのかわり範囲や距離がのびますよ」という設定をする。多くの人はエイルで十分と判断するだろうが、セーラスが欲しい人は確実にいる。
(続きます)
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