果たして、共感は存在するのだろうか。他人の、自分と似た部分を思うという行為が。
ニーサ村のヒヤーネさんから、頼まれ事をした。養女として引き取ったリルチェラのために、温かい布団を作ってやりたいのだという。そのためには大魔獣イーギュアの討伐か、ぬくぬくどり200匹を倒す必要があった。
孤児だったリルチェラ……
全滅したエテーネ……
氷の領界の冷たさ……
冥王の凶刃……
もしかしたら、それらは決して比較できないのかもしれない。全て、万華鏡のように千変万化する、全て違う形なのかも。
比べても仕方がないことは理解している。あのような、いたいけな子供の感性が鋭いことも理解している。しかしながら、声を大にして言えたら、どんなに良かったことだろうか。
わたしだって……。
いや、やめておこう。今は、イーギュアかぬくぬくどりを倒すことに集中すべきだ。だが、なぜだ? なぜ、私は土台無理なイーギュアを倒すつもりになっているのだろうか。
必死に自分を抑え込み、ぬくぬくどり200匹ぶんの羽毛をヒヤーネさんに渡した。これで、リルチェラには温かい布団がもたらされるだろう。
ならば私には、誰が温かい布団をくれるのだろう? 万華鏡だの千変万化だのという小難しい言葉を用いたが、要は嫉妬ということだ。くそっ。
考えても仕方がない。今はクロウズや妹を追うべきだ。
闇の領界が私を待っている。