神妙な面持ちを見れば、ぬいぐるみ目当てでないことはわかっていた。
「解放者様、お話がございます」
「エステラさん?」
「重要なことです」
とりあえず座ろう、とも私は言い出せなかった。
「解放者様の、妹さんについてです」
私は、虚を突かれた。
「このままでは、解放者様をお守りするという義務が果たせません。ゆえに、今度会った時は……自衛の許可をいただきたいのです」
「自衛? それは」
「妹さんを、キズつけるかもしれないということです」
私は、大きく息をついた。
「申し訳ありません。ですが」
「いや、構わない」
私は即答していた。その時の、エステラさんの表情は。
「構いませんが。ですが、エステラさんも自分の魔法が通用しなくて、少しばかり悔しいという思いもあるのでは?」
「なんですって?」
「妹にメラゾーマを撃とうが、メラガイアーを撃とうが、それは勝手です。でも、少しでも利己的な思いがあるのならば、そこが弱点となるでしょう」
「解放者様、そんな……」
「ただこうなった以上、私もあいつを妹とは、もう思いません。ゆえに、身内の恥は身内で始末させていただきたい」
「妹さんを、その手にかけるというのですか?」
「自衛の許可が欲しいと言ったのは、そちらです」
「ですが……そこまで割り切れているだなんて」
「一度は生まれ変わった身ですから。躊躇はないつもりです」
「では、ご兄弟が助けを求められても、手を差し伸べない用意はあるのですね?」
「……」
「『助けて、兄さん。せっかく会えたのに、また別れるの?』と上目遣いで言われても」
「よせ」
「これで、永遠にご兄弟と――」
「よせ!」
私は、どうやら口だけだったようだ。
「いいえ、安心しております。感情のない解放者様など、背中は預けられても尊敬には足りません」
「……すまない」
「みんなに笑われてしまいます。顔をお上げになってください。ほら、グレート・エリゲール13世や、グベヌッポが」
エステラさんが冗談を言ったことに、私は安心する思いだった。
私は話題を変えた。実は、ある筋からキラーパンサーとゴーレムのぬいぐるみを手に入れまして。よろしければ……。
「まあ、それでは是非! もう名前も考えているんです。そう、キラーパンサーの名前は、どれがいいでしょう? ボロンゴ? プックル? チロル? ゲレゲレ?」
おい。
~おしまい~
おまけ。
Q,この後の展開を選んでください。
1.「なんです? これは。ふんっ!」
かいしんのいちげき。花束は999のダメージをうけた。
2.「これは、解放者様の一番大切な方のためにとっておいてあげてください。ごめんなさい」
というか、こっちもかいしんのいちげき(つうこん?)。
3.「ああ……なんてこと! こんなことのために、こんな私なんかのために……道端で一生懸命に咲いていたはずの、罪のない花の命を、解放者様、あなたという方は……うれしい……とでも言うと思いましたか? ふんっ!」
ノーコメント。
4.「いい香り……」
しかし、花束の中に隠れていた蜂で、エステラは鼻頭に痛恨の一撃を受ける。それから、解放者の姿を見た者はいない。FINかつTHE END。