ある日の、昼過ぎの頃、三門の関所で受けた依頼を達成するため、私は友人と雑談しながらグランゼドーラ領の南を駆けていました。
やれ、最近の結晶金策は世知辛いとか、出費はどうだとか。
さてギガントドラゴンはどこだ、すっかり保護色になっているので見つけづらい、とか。
そして、槍僧侶を最前線でするとなれば、よほどの出費があるだろう。きつい道だ……、など。
そう、私は槍僧侶。
回復を行いつつも、ジゴスパークで敵の雷耐性を落として主力の攻撃を強化したり、真やいばくだきが外れた時に隙を見て武神の護法を打ち込むなど、回復しつつ中衛に立ってヤリで援護するという戦闘スタイルですが……、回復は専ら呪文によって行うために、ヤリと本来の責務を両立させるためには手に持つヤリの側によほどの呪文発動速度錬金が必要です。
そのため多くの同輩たち先輩たちは、僧侶のときにスティックを握っていて、実際に私も、強敵を相手取るときはもっぱらスティックと盾の装備です。
ただ槍をやるだけならば他にも選択肢はありますが、どうぐ使いは出費が激しいそうで、万年金欠な私にはとてもつらい。パラディンはそれなりに楽しそうですが、こっちは盾の取り回しが重要でヤリ装備はこれまた難しい。
やっぱり、もっとも慣れている職ですし、槍僧侶をやっていきたい……、でもいろいろと世知辛い。
などと話していると、岩の陰に緑色の影。いた! ギガントドラゴン。ようやく見つけました。
さくっと倒して、依頼達成……、するも、なんだかもったいない。
せっかくこんなにも探し回ったのに、5匹倒してはい終わりはなんだかつまらない。
そんなよくわからない理由を口に、とりあえずその場に残っていたギガントドラゴンを倒していきます。腹いせです。
どうやらこのあたり一帯のギガントドラゴンがまとめてこの岩場に潜んでいた様子、珍しいですがたまに見る光景です。
そして、エモノ呼びとはかくも罪深い……。
おや、白宝箱。ちょうどキリも良いし、さすがにそろそろ戻ろうか……。
開封。
・呪文発動速度 +6%
・呪文発動速度 +6%
・呪文発動速度 +6%
?
????????
見た瞬間、心臓が、グランゼドーラに来て以来の変な挙動を起こしました。
さっき、話していたやつ。すごく、つよい、ランス。
なんだか、すごく、すごい、らしい。
雑談していた友人に見せました。
「えっつよ」 絶句。
私も私で考えが追いつかず……、落としやしないか? うっかりそのへんの石の上に置き忘れやしないか? 見間違えでは?
と、半ば目を回しつつ帰路に向かう。
……どうやらこれは、ほんものの呪速埋めタワーランスっぽい。
しばらくして、別のこともして落ち着きまして。
使ってみました。呪速タワーランスの初陣。
ものすっごく、使いやすい。
下手すると、今まで使っていた安物スティックよりも呪文が馴染みます。
これは……、これはすごい…………。
キラキラポーンやホップスティックの援護が必要な敵は、最初から情報を揃えてスティックを持ってかかればよいですし……、武神の護法にジゴスパークに、普段位置どっている中~後衛から前線まで、武器の持ち替えがなければこれはなんと援護がたやすいことでしょうか。
すごい。
今まで使っていた攻撃力アップつきタワーランスは、私がレベル90代に着いた頃に友人から頂いた大切な業物……。
けれどその彼女も、この装備と更新されるのならば彼(武器)も納得だろう、その装備を大切にするように……、と言っておりました。(呪文をほとんど用いないパラディンではその攻撃力タワーランスを使い続けるつもりです)
ほんとうに、すごい品……。
なんだか、ゆめまぼろしのような出来事ですが、友人にエンドオブシーンしてもらったので現実っぽさそう。
ともあれこれで、現実味を帯びてきた槍僧侶……! 頑張っていこうと思います。