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生と死をつなぐ者

フラン

[フラン]

キャラID
: HB919-542
種 族
: エルフ
性 別
: 女
職 業
: 賢者
レベル
: 131

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フランの冒険日誌

2016-07-05 19:34:14.0 2016-07-11 21:19:11.0テーマ:その他

【短編小説】K.626 part3

※この物語の時間軸は、Ver2.2終盤です。未到達の方は、ご容赦ください。
※また本作は、ゲーム本編及び関係者・団体とは一切関係ございません。2次創作が苦手な方はご遠慮いただきますよう、お願い致します。
※過去作『とけないこころ』と、そこはかとなくリンクしてます。
※part1からお読み頂くことを、強くおすすめします。








「ひ、姫様?」
「夜分にごめんなさい。さっき話し声が聞こえたのだけども」

表情は強張ってはいないだろうか。せめて顔だけは、いつもの私でいなければ、と気を引き締めて、アンルシアは衛兵に声をかける。

「申し訳ありません、大きな声で話していたつもりではなかったのですが」
「いいえ、今日はなんだか眠れなくて、少し休んでいた所なの。気にしないで頂戴……ところで」

一呼吸おいて、気取られないように探りを入れてみた。

「さっきの話だけど、何かあったのかしら」
「いえ、盟友殿がつい先程通りかかって……外へ行かれると仰ってたので」
「彼女が?」
 
そこで盟友の名が出てくるのか。雨垂れに晒された布のように、不安が滲んで広がっていく。
先日の事がある。盟友と言えど、こちらから先に不信感を抱いてしまった以上、向こうもそうならないとは言い切れない。いや、そうなる可能性は、むしろ少なくないのだ。口元が固く引き結ばれそうな所を、彼女は無理矢理言葉を発して抗った。

「どんな様子だったの?」
「それが、どうも御気分が優れなかったようでして」

衛兵曰く、ふらふらとした足取りに加え、顔面蒼白であったので、見るからに体調が悪そうな様子に思わず声をかけてしまったそうだ。
何事に対してもほとんど感情を表さない彼女に限って、そんな事があるのだろうかと、一瞬耳を疑った。だが驚きも束の間で、逆に自分とは少なからず無縁そうだという安堵を、図らずも感じてしまった。

「そう」

気のない返事だと自分でも思う。アンルシアは視線を落とした。
お勤めご苦労様、と軽く声をかけると、衛兵は大した距離でもないのに部屋の前まで律儀に見送ってくれた。ご丁寧に敬礼までして。でも、それを直視できないまま暗がりの部屋へと戻っても、くすぶった憂いは未だに渦巻いたままだというのに。
夜半の会話を暴くという目的は達した。後はこのままベッドに潜り込み、ひたすらに微睡みの到来を待てば良い。
しかし、ならば盟友はどうか? 眠れぬ夜は自分だけでなく、彼女にも等しく訪れている。孤独な夜を抜け出すのは、果たして自分だけで良いものか。罪悪感は容赦なくもたれかかってくる。心配と口に出すのは容易い。しかし、今の私に何か出来るというのかしら。肉親一人救えなかった私が、赤の他人に手を差し伸べた所で。




――――アンルシア……アストルティアの勇者よ……頼む……この世界を、救って……くれ……




兄の声が聞こえた気がした。コーヒーに溶けゆく砂糖のような儚さで、でも確かに。そうだ、兄様は言った。今際の際に、救えと。この世界を。夢に出た時と同じ声の調子。リフレインするその科白を咀嚼しながら、ゆっくり、ゆっくりと、今頭の中で起こっている感情のうねりを落ち着かせていく。
忘れていたわけではない。むしろ嫌と言うほど耳に残っている。今になって、その意図が鋭く突き刺さったと言うべきだろうか。
記憶の世界で兄様は言ったではないか。勇者だから、ではなく、私だからこそ身を挺したのだと。
勇者としての責務ばかりが先立っていた私は、それを見誤っていた。人を案じる事に、責務など関係ないのだ。自分という人間が盟友を、この国の人たちを、ひいては世界を魔の手から守りたいと心から思うから、その振る舞いに勇者と言う肩書がつくだけなのだ。
そしていつかの時に、盟友が投げかけてくれた言葉を思い返す。

『――――信じればいい』
「……こんな自分でも、信じて良いのかしら」

いや、信じてみようではないか。この気持ちに目を背けたら、もう勇者でいられなくなる気がする。苦しむ人を救おうともしないなんて事はしたくない。そう、アンルシアという一人の人間として。

翻って、再び扉を押し開けようとする。しかし、よくよく考えれば先程の衛兵に無理を言って外に出してもらうのも、流石にばつが悪い。とはいえ、バルコニーから飛び降りる訳にもいかない。さて、どうしようかと思案する頭に、先程までの愚鈍さは感じられなかった。
と、そういえば。
暗がりの中で、覚えも怪しかったが、ややあってかつて盟友が使った隠し通路に続く壁を見つけた。感触を確かめる。軽い。そうだ、自分に道を示してくれた人の為ならば、はだかる壁のなんと軽い事か。
手に込める力に、今度こそはと気持ちをのせ、アンルシアはそれを押し開けた。




~part4に続く~
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