目覚めし冒険者の広場-ドラゴンクエストXプレイヤー専用サイト

生と死をつなぐ者

フラン

[フラン]

キャラID
: HB919-542
種 族
: エルフ
性 別
: 女
職 業
: 賢者
レベル
: 131

ライブカメラ画像

2D動画 静止画

写真コンテスト

{{ photoImg }}
さつえい日  :  {{ photoDate }}
さつえい場所  :  {{ photoZone }} ({{ photoWorld }})
{{ photoImg }}
{{ photoImg }}
{{ entryTitle }}
{{ mangaImg1 }}
{{ mangaText1 }} 
{{ mangaImg2 }}
{{mangaText2 }} 
{{ mangaImg3 }}
{{ mangaText3 }} 
{{ mangaImg4 }}
{{ mangaText4 }} 

フランの冒険日誌

2016-07-11 21:17:39.0 2016-07-11 21:18:19.0テーマ:その他

【短編小説】K.626 part6(完結)

※この物語の時間軸は、Ver2.2終盤です。未到達の方は、ご容赦ください。
※また本作は、ゲーム本編及び関係者・団体とは一切関係ございません。2次創作が苦手な方はご遠慮いただきますよう、お願い致します。
※part1からお読み頂くことを、強くおすすめします。









『過去は常に、今から見れば実際の過去より美しく思える。 過去が楽しいのは、過去が今ここにないからに過ぎない』――――ピーター・フィンリー・ダン







「ねえ、どうして今になってそんな事を教えてくれたの?」

水平線の彼方から、僅かに白が滲みつつある。凪いだ水面にはまばらな光の乱反射が目映く迸り、ともすれば目を覆いたくなるほどの煌きが、夜の引き際を促すようにちらついていた。
アンルシアはどうしても疑問だった。何をかというと、今まで自ら話すこともなかった自分の過去を、何故教えてくれたのか、である。だから、聞いた。視線は遠くをぼんやりと捉えながら。

「フェアじゃないから」

と、一言、盟友は素っ気なく答えた。
予想を逸脱した返答に、勇者は眉をひそめる。どうやら盟友は遠回しにものを伝えるのが好きらしい。ただ、その意図を汲みきる事が出来ず言葉に窮してしまい、なんとなく持て余す感じになって申し訳ない気持ちになる。通り一遍の美辞麗句は出てくるが、その中に場をつなぐ適当な科白は見当たらない。
二人の間に些かの齟齬が生じたことに気付いた盟友は、訂正をするようにそれに付け加える。

「成り行きとはいえ、私は貴女の記憶を覗いたのよ。それでも私の事を隠し続けるのは、フェアじゃないと思っただけ」

ああ、とアンルシアは納得した。そんな事、こちらは気にもしていなかったのに。

「それに――――」

盟友は続けざまに何か言おうとして、言葉を飲み込んだ。
ふと、聞きなれないメロディが流れる。物憂げで、儚く、それでいて思わず遠い昔を呼び起こす様な。聞いたことはないが、恐らくはこの国のものではない、独特の曲調。
そんな気はしていたが、横を見やればどことも知れぬ異国の調べは盟友が奏でていた。それも、だいぶ吹き鳴らしているだろう様子で。

「このままじゃ、みんな安らかに眠れない」
「その曲は……?」
「死んだ者を見葬る時の曲」

曰く、盟友の故郷では一人の為に皆が涙を流し、祈りを捧げるという。王家の者であれば、国を挙げての葬列が当然だし、人々もまたそれを望む。だが、小さな村や町では、自分の生きている共同体が全てで、比喩ではなく家族に等しい存在なのだという事も、アンルシアは痛感した。いかに彼女が故郷を想い、思い出を並べられるのか分かったような気がした。
それと同時に、あまりにも残酷だとも思う。そんな縁深い人々を、彼女は全て喪ってしまったのだから。それはアンルシアとは比べようもないほど大きく、重い過去だ。
先程、通じ合うものがあると感じた。だがやはり、自分と盟友は越えてはいけない隔たりがあるのだろうか。

「そんな顔をさせたかった訳じゃない」

盟友の声が、勇者の思考を遮った。

「貴女は、私を心配してここまで来てくれたのでしょう? 私もまあ、何というか、その、同じだから」

前言を撤回しなければならない。
彼女の言う「同じ」にどれだけの意味合いが含まれているのかは、あくまで想像の域を出ない。そんな婉曲した言い方でも、これだけは伝わった。

「心配してくれていた、という事かしら」
「……」

投げかけた問いに対して、返事は返ってこない。しかし、決まりが悪そうにあらぬ方向を向く盟友には、いつもの冷淡さも影を潜めている。間違いなくアンルシアが盟友の心を、幾許かのものであったにせよ、解きほぐしたのだ。本当に感謝すべきは自分の方だというのに。誰かを救えたというたった一つの事実が、彼女を明日も勇者にさせてくれる。何物にも代え難い、その言葉のおかげで。
アンルシアは無性に嬉しくなった。遠く感じそうになっていた盟友もまた、誰かを助けたいという思いが持っていた。それを仰々しく例えるならば、まさしく勇者の精神とでも言えるだろう。

「貴女が盟友で良かったわ」
「何よ、その含みのある笑顔は」
「なんでもないわ、ふふ」

空が明るい。どうやら寝直す時間はなさそうだ。
すっかり朝の様相に変わりつつある日の光を受けながら、アンルシアは盟友に顔を向けた。明け方の挨拶には全くそぐわない事は分かっている。それでも伝えずにはいられない。盟友にも、自分にも。
そうして心地よい冷気を吸い込み、一言。

「おやすみなさい、今夜もいい夢を」

それは祈りにも似た、ささやかな願い。








-了-


いいね! 7 件

ログインしていないため、コメントを書くことはできません。


戻る

ページトップへもどる