ア 本人について
今は亡国となったある国で奴隷の間にできた子供。人並みの教育は当然受けられず、また飼い主の気まぐれで酷い暴行を加えられる日々を送っていた。
彼女が8歳になってから少ししたある日に、どこぞのペドの元に売り払うと飼い主に告げられる。その発言がきっかけで、彼女は衝動的に飼い主を殺害する。
…しかし、事はそれに留まらなかった。彼女は特殊な遺伝子の構成をしており、生まれつき無機物に偽りの生命を与え、使役するという能力を持っていた。彼女の殺した男は動く死体と化し、通りに出て手当たり次第に通行人を殺害した。そして彼らの死体はまた動く死体となり、それが国全体に及んで…
自らの従えるモノ達によって引き起こされる惨劇を前にし、彼女は生まれて初めて笑った。彼女にとってのこの世界とは憎しみの対象でこそあれ、憐憫の対象にはなり得なかった。そして何より、彼女には「真っ当な倫理観」など誰からも与えられてはいなかったのだ。
かくして彼女は国を一つ滅ぼし、死者の女王となったのである。