アとその眷属が異変の調査を進める中、近隣の海洋上を一台のヘリコプターが飛んでいた。操縦席には壮年の男性、後部座席では少女が横になっていた。少女の手には先刻から起動し続けているトランシーバーが握られていた。
「はいはい分かってますよ、今度はちゃんと言質とってから皆殺しにすれば良いんですよね?それ位かんた…え?違う?」
どこかふざけたような口調で少女はトランシーバー越しの人物と会話を続ける。その所作は、今から国を滅ぼして、その土地を奪おうとしている人物のとるものとしてはあまりに自然体に過ぎた。
だが、それもそのはず。彼女にとってこれから行われる行為は彼女にとってはただの業務の一環であり、特筆すべきことにはなり得ないのだから。
「まあ、私から見て気になる人がいたら生かして連れて帰りますよ。…ええ、勿論本当ですとも。」
少女の名はメファ。数多の国を滅ぼし、"その土地を持って行く"姿から、付いた二つ名は『国引き』。国際社会において最も危険視されている要注意人物、その人であった。