私が"なぜか"気絶し倒れた後、少女は私を介抱し、再び事情を聞き出そうとしていた。
「それで…"あなたは"その、冥王ネルゲルという者に殺され、エルドナ様の手により姉様の体を借りて蘇った…。
そして、本来の体は暫くすれば戻ってくるので、それまでの間だけでも姉様の体を借りたい、そういうことですね?」
「う、うん。嘘はついてないよ。」
私の言葉に少女はため息をつき、
「それはあなたの風を読めば分かります。少なくともあなたは、その荒唐無稽な話を信じているとね。」
じゃあ、と言う私を少女は片手で制し、
「ですが当事者として、私はあなたのその願いは虫が良すぎると感じます。
仮にエルドナ様のお導きとあっても、私や遺族の方に何かしら御神託があってもよかったはずです。
いや、それを言うなら、そもそも他の種族神の御方々は一体何を…」
…これは、望み薄かもしれない。私がまな板の上の鯉の心持ちで佇んでいると、それを察したかのように少女がこちらを向き直る。
「………………、当分はその体のままでしょう?」
「う、うん」
「で、その体のままネルゲルへの足がかりを探し、あわよくば戦い倒すつもり…と。」
そこまで言った少女は、大きくため息を吐き、
「それなら、私も連れて行きなさい。」
予想外のことを、言い出した。
「…え!?止めたりしないの!?というかあなたも行くって、えー、えっと、え?え?」
「……エルドナ様の御言葉を無下にすることはできませんし…、私程度の殺気で気絶するような者が魔物達と戦って、姉様の体が完璧な状態で戻ってくると考える方がおかしいです。
だから、あなたのお目付役として連れて行け、と言ったのです。」
そう言いながら苦虫を噛み潰したような表情を浮かべる少女だが…、どうやら彼女は私を助けてくれるらしい。
捨てる神あれば拾う神もある…そういうことなのだろう。きっと、多分、そうに違いない…
「私の名前はフウラ。フィーネさん、くれぐれもよろしくお願いしますね?」