『なっ! あ、あなたねぇ!、、、』
『いくら待っても来ませんよ♪』
彼女は微笑みながらそう繰り返した。
笑顔でサラッと言うセリフじゃないし、そもそも言われる筋合いでもない。
見た目のイメージと程遠く失礼極まりないなと蔑視をあびせながら立ち去ろうとする私に彼女は言い放った。
『いったい、誰をいつから待っているんですか?』
そんなの決まっている。
『誰かってどこかの誰かよ。いつからってずいぶん前からよ。』
(? ん? )
今、私はなんて言ったの?
『もう覚えてないくらい長い間待ってたんだね、、、』
彼女はそう言って涙をこぼした。
そして、戸惑う私に訪ねた。
『ここはどこ?見覚えない?』
見覚えはある。よく来ていた駅前の広場だ。
あそこのお店のご主人はたまに通りがかる私にお菓子をご馳走してくれた。とても優しい人だ。
あと、あそこに立っているアイツとはケンカをよくしたなぁ、、、
そして、あの角を曲がって、、
『!?』
突然、ある景色が頭を過った!
『、、、気づきましたか?』
『ここは、あなたが最後に見た光景です。』
『最後?』
『、、、はい。』
呆然とする私をよそに、彼女は言葉を続けた。
『あの角で、急に飛び出したあなたは車にはねられたんです。』
そうだ、思い出した。
私はアイツを見つけてあの角を飛び出したんだ、、、
『私は最初からあなたに向かって呼び掛けてましたよ。あなたに、私の話を聞いて欲しかったんです。』
『え、だって、だって、私を探してたじゃない?』
『それはそうですよ。あなたは自ら姿を表さない限り、決して見つけることはできないんです。』
『、、え、私って、見えてなかったの?? だって、だって、今日もお菓子をもらったよ??』
彼女は悲しそうな目で
『、、、先程も言いましたけど、ここはあなたが最後に見た光景、、、の世界です。現実の世界じゃないんです。』
『現実、、じゃない?、、』
『あなたは転生もせず、自ら作った幻の世界に埋もれていたんです。
とても見ていられなかったので、私があなたをここから連れ出しに来たんです。』
『じゃあ、あなたは?』
『転生の権限を持つ上級天使の一人です。』
彼女は、いや、天使はそういうと再び私に尋ねた
『あなたは、幸せでしたか?』
『嫌なこともあったけど、、』
アイツを見た。いつもにもましてふてぶてしい態度だ。
、、私の記憶の中ではだけど、、
『でも、楽しかった、、、うん!楽しかった!』
私は胸をはって告げた。
『わかりました! あなたは天寿を全うしたと私が承認しました。』
『では、これからお仕事させていただきます。
つきましては、1つあなたの希望をお聞きして、それに見会った世界で新たに生まれ変わります♪』
『ご希望はありますか?』
一気に捲し立てられてあたふたしてしまったが、私は1つだけ希望があった。
『今度は人間になってみたい!』
『それはまたどうして? その姿もかわいいですよ♪』
『だってね! 人間は自ら色々な姿に変われるの!』
私は目をキラキラさせながら言った。
『私はいつも同じ姿だけど、人間は季節はもとより、天気でも姿変えるのよ! こんな楽しいことないじゃない♪』
『それでね、それでね、、、』
『いつも綺麗なお洋服を着て、、』
『素敵な色になれたらいい』
【end】