私は楽園にいた。天より高く、病のひとつも無いこの場所は、私の数週間の空白を取り戻すために歩かなければいけない道の真ん中であった。
『楽園に辿り着きし者の真実を、証明することはできるのか』
これはとある節の、楽園に対するパラドックスである。
仮に楽園が存在するのであれば、辿り着いたものは史上の喜びと幸福の為に楽園の外に出ることはないだろう。
しかし、一度でもそこを出ることを頭に浮かべてしまうのであれば、真に楽園と呼ぶことはできない。
なれば私の在る楽園は存在自体が虚妄である。なぜなら、私がここで立ち止まることはないからだ。
ここを通り抜けた先の、その先の、いつ辿り着くかも分からないver.6。私にとっての楽園はここにはない。
勇む足で冥闇の聖塔に踏み入ります。
いえーい!パラディンダブルガード!
意外とキツい体勢に相方は顔を歪めます。対する私は澄まし顔、若さが違いますからね。
火、氷、闇とやって来ましたけど雰囲気が一番好きなのは闇でしょうか。難易度は個人的に断然氷の塔が一番です。
塔のボスはやはりと言いますか、骨格は使い回しでした。戦いの最中に記念写真をぱしゃり。
あまりにも余裕そうなこちらの態度に辟易したのか、腰の入っていないへなちょこドルマドンを連発して来ます。
彼の攻撃を振り払う手が装甲に当たると、砂粒のように儚く砕け散りました。こんなものです、人生。刹那的に終わってしまう。
早々に決着をつけ、次の領界へ旅立つ準備を始めます。しかし、円盤をはめ込み進もうとする私たちを小太りのモグラモンスターが引き止めました。
何か言っていました。正直あまり覚えていないのですが、ニュアンスとしては「私がお前を鍛えてやろう」?みたいな、そんな感じです。
はて、見ていなかったのでしょうか。私の所作ひとつでガーディアンが吹き飛ぶこの危うさを。愛する人の前で寝返りも打てないでいる、恨めしい強さの証左を。
この身体が抱える苦難と、それに悩んだ年月の長さはこのモグラを許せそうにありませんでした。気付いた時には腰の刀を抜いて......
───目覚めると痛快な青空が、私を見下ろしていました。
私は、負けたのです。目で捕えることすら出来ませんでした。細切れにされる身体はこれをバギムーチョだと教えてくれましたが、痛みの内で飛びゆく意識の前にはそんな思考も麻酔にすらならず...。
ああ、2000弱。それが最後に食らった私のダメージです。
"勝利とは習慣なのだ。残念ながら、敗北も同じ"
-ヴィンス・ロンバルディ-
fin.
※この日誌はボスエリアの写真が含まれているからほとんどの人に届かない。でも例え全てが虚しくても、それは今日最善を尽くさない理由にはならない。ばにたすばにたーたむ。