使用した写真の都合で並び順が変になっとるのよ
これはその③なのでご注意を!
---以下本文
パンパニーニの葬儀はしめやかに執り行われ。
そしてアイリちゃんは立派に喪主を務めあげた。
彼女は天涯孤独となってしまった。今後は村人全員で支えていくつもりよ。
パンパニーニは彼女が食べるのに困らないだけのお金を残したと言ってたけど、それに手をつけるつもりはない。
アイリちゃんは村の子として育ててあげ、いつか旅立つ時に持たせてあげればいいだろう。
また、ザンクローネの物語は未完のまま時を止めたけど、村人たち全員を含めたファンの心に彼は生きている。
メルサンディ村は、「ザンクローネの村」から「パンと空気がおいしいのどかな村」へと、ゆっくり戻っていけばいいのだ。
ある日のこと。
「村長!話があるの!」
今までのアイリからは想像もつかないほどの大きな声とともにワタシの部屋の扉が開いた。
どうしたの??
「今後、童話関連の印税は全てワタシがもらうことにするわ。」
え?
確かに、パンパニーニが有する全ての権利はアナタが相続したわよ。
でも、彼は生前全額村へ寄付し、発展させてほしいって言ってたのよ?
「それはおじい様が生きていた時の話よ。全ての権利をワタシが相続した今となっては、そんな口約束は無効よ。ちなみにそれ、カミハルムイの敏腕弁護士、キュウスケさんにも確認したけど、問題ないって。」
そう。。
彼女の言ってる事は筋が通ってる。申し出の通りにすべきだろう。
でも彼女は若い、若すぎる。
不安しかないわよ?
「ぐずぐずしてると、法的な手段を取るわよ?」
あ。わかった。
アイリちゃんのために、との思いから反論したけど逆効果だったようね。
ワタシは童話関連権利的収入の振込先をアイリちゃんの口座へ変更し、また村でプールしていたこれまでの寄付金を全額手渡した。
いくばくかの時が流れ。。
気がつけば村の真ん中にザンクローネの石像が建立されていた。
村からの出費は一切ないので、おそらくアイリちゃんが全額出費したのだろう。
しかし本当に驚いたのはその後だった。
パンパニーニとアイリちゃんが暮らしていた小さなお家は、村で一番大きな豪邸へと建て替えられていたの!
アイリちゃん。。1人で暮らすには広すぎないかしら?相続したお金はまだまだあるだろうけど、もっと有意義に。。
「ワタシのお金よ。どう使おうがワタシの勝手。それより村長、手伝ってほしい事があるの。」
半ば強引に手を引かれ、ピカピカのキッチンへと連れて行かれたの。
「この村のパンってね。確かにおいしいんだけど、素朴すぎるの。違いのわかるオトナならいいけど、その辺のガキにはウケないのよ!」
確かにそうかもしれないけど。
特産の上質な小麦が香るいいパンよ?
そして、他では真似できない秘密もあるし。
「秘密。。それって、イーストハンドを使った特殊な酵母菌の事よね?」
え、なんで知ってるの!?
村人たちにもその事は言ってないのに!
「だからーワタシをその辺のガキと一緒にしないでって言ってるの。で、さっきも言ったけど、酵母の違いなんてガキにはわかんないのよ!」
ふむ、確かにそうなんだけど。
でもなんでガキ…いや、こどもをターゲットにしないといけないの?
うちのパンを評価してくれているオトナ達はそれなりにいるわよ?
「村長。。童話って誰のためのものよ?」
あ、確かに。
童話を読んでこの村を訪れる人たちはまだ多い。そのほとんどはこども連れだ。
でも。。。
「それにザンクローネの物語はまだ続くわよ。」
え?
「ワタシが書くもの。ワタシはあのパンパニーニの孫よ。そのワタシに文才がないわけないじゃない!」
ないわけないじゃない。。って言ってるあたり、文才のなさを感じるけど?
口から出そうになった言葉をグッと飲み込んだ。
「それに。。ワタシが困ったら。。おじい様が絶対助けてくれるもん。絶対。。」
最後の「絶対」には祈りに似たニュアンスが入ってた気がする。
まぁ文才はともかくとして、商才はありそうだもんね。
こども向け新名物パン、開発しよ?
「うん。。ありがとう村長!でね、ワタシ考えたのが…」
…
そして夜があけた!
つづく