こすもっこよ。
どえらい引っ張ったけどよーやく最終回なのよ。
読んでない人はぜひその①から読んでね。
注意
使用した写真の都合で並び順が変になっとるのよ
これはその④なのでご注意を!
ーーー以下本文
「で、できた!」
できたわね。
出来上がったのはザンクローネパン。
物語の中に登場するそれは命に関わるほどの激辛パンなのだそうだけど。
アイリが提案したのは、こどもが安心して食べられる激辛(風)パン。
唐辛子以外の香辛料をふんだんに使い、また赤パプリカの粉末を混ぜる事で見た目は真っ赤!そしてその味はとてもスパイシーな仕上がりとなった。
唐辛子を使っていないので、全然辛くはないのだけど、香辛料の絶妙な配合により辛いような気分になる。香辛料の風味が鼻から抜けた頃、今度は香ばしい小麦の風味とほのかなバターの香りが押し寄せる。一見イロモノパンなのかと思いきや、パンとしてのクオリティも最高級なの。
アイリちゃんいわく、ゆくゆくは「カレー」とかいう異国のソース?を完成させ、なんとこのパンの中に入れるのだそうだ。
「このパンを作り上げるためには、このメルサンディの上質な小麦と、村長の手についている特殊な酵母がどうしても必要なの。」
徹夜明けの疲労が隠しきれないその顔。しかしその顔には年齢に相応の無邪気な笑みが宿っていた。
「村長。今まで勝手に色々やっててごめんなさい。おじい様が死んだ時、ワタシものすごく危機を覚えた。しばらくはいいけど、5年後10年後を見据えた時…このままではダメだと思った。ザンクローネを軸とした、この村のブランディングはまだまだ中途半端。だから、ちゃんと完成させる必要があったの。」
え?ぶらん天狗?
なにそれ?天狗ぶらぶらー鼻ぶらぶらー。
「…つづけるわね。多分それができるのはワタシしかいなかった。実はね、おじい様が亡くなった時、各方面からの問い合わせが殺到したの。権利を買取りますだの、サポートしますだの。村をザンクローネテーマパークにしようなんて話もあった。…ほんとハイエナばっかりよ。だから!可及的速やかに進めていく必要があったの。」
なるほど。
カキューテキ隅田川にね。
赤い手拭いマフラーにして石鹸がカタカタいうやつよ。違うわよ、それは神田川よ!…はぁ?!
…
確かにワタシがその問い合わせを受けていたら、そんなに悪い話じゃない、いやむしろいい話だと思って食いついていた気がするわよ。
今思うと「権利を全てよこしなさい!」と強く迫ってきたのも、時間との勝負のなか説明してる場合じゃなかったのかもね。
でもそれで言うと、なんでお家を建て替える必要があったの?
「あの家はね。童話作家の家として開放するの。パンパニーニの遺品や、直筆の原稿。そんなものを展示してね。」
あ。記念館ってことか。
そりゃ前の小さなお家じゃ見栄えしないもんね。
「あとね、まだ秘密なんだけどね。ハウスメーカーとコラボしてこのお家のレプリカが家キットとして発売されるの。そのためにはある程度立派な家にしておく必要があったのよ。」
なるほど!なるほど!
アンタすげーじゃないのよ!
かしこよ!天才よ!アンビリーバボーよ!セッシボーンよ!
「ふぅ。。これでひととおりやる事はやったわ。これでもうこの村は大丈夫。で…あとは、物語を完結させるだけね。」
あ。
うん、ハッキリ言うわよ。
アイリちゃん。アナタ商才はめちゃめちゃあるけど、文才があるとは思えないの。
だから物語は未完のまま置いておくほうがいいんじゃない?
「…そろそろ、その時が来たようね」
は?何言ってるの?
「村長。アナタの仕事は終わった。もうそのピートの体は眠っている本人に返しなさい。ワタシもこの身体をアイリに返します。」
え?アイリちゃん?
「そしてアナタはこすもっこりに戻り、再びこの村を訪れて物語の完結を手伝うの。」
あ。。。。
ツナガッタ。
もしかしてアナタ、ワタシを転生させた神様だったのかな。
全ての糸が繋がった刹那、ワタシの視界が揺らぐ。薄れゆく意識の中、アイリちゃんの笑顔が見えた。
アイリちゃん。ありがとう。
それと。。
だーーれがこすもっこりよ!!
おしまい