『闇騎士物語』 (4/10)
シャルは、しつこかった。
無視しても、怒鳴っても、何度でも声をかけてくる。
なんて厄介な相手だと、カシアは思った。
会話して飽きれば、もう近寄って来ないだろう。
そう考えたのが誤算だった。
会話を重ねる度に、シャルは何度でも来るようになった。
しかも、もともとは花屋の息子だったらしく、花好きのカシアと
話が合った。
魔物と戦っては、感謝の言葉と畏怖の視線を受けた。
休んでは、孤独だと思い知らされた。
分かっていた。
闇騎士になった時から。
だからこそ、他人と関わらないようにした。
その方が心が痛まない。
魔物を倒すのは、人々の為ではない。
自分の為だ。
…でも、辛かった。
そんなカシアにとって、シャルと会うのが、楽しみに変わっていた。
彼だけは、畏怖の視線を向けてこない。
冷え切った心が、温かくなるような気がした。
少しずつ会話の時間が増え、2人の距離が縮まっていく。