というわけで。
一から始めた気がいまいちしない新世界生活だが、伝手がないわけではない。
自分の同郷で放浪人だった男が、市井に降って連れ合っていたという旅の仲間のひとりがここに来ていることは知っていた。
人探しには酒場が一番だろう。なんだかんだで流れに任せて森人のムラを出奔、たどり着いたドワーフのけっこう栄えた街で情報を集めていると、自分宛のメッセージが届いていた。
どうやら、当たりらしい。
いまいちこの世界の通信システムというものに馴染みはないが、おっかなびっくり返信。
カタコトの暗号みたいなやりとりの末、遂にくだんの人物を探し当てることができた。
アーツという名前の、けっこう腕の立つ武闘派の所謂イケメンだ。
故郷の噂で聞いてる姿となんか微妙に種族が違ったけど、ここはそういうとこらしいから問題ない。
アーツさんはすごく喜んでくれた。
おれの事を昔の仲間の縁故を頼って訪ねてきた子供だと思ってるようだった。
…けっこういい年なんだけどな。
とりあえず、思い出話に花が咲いた。
出会って数刻ですでに互いの事情を深く語り合う間柄になってしまっている。
個人的には街の入り口の酒場で一杯引っ掛けながら語り合った方がいいんじゃないかと思ったんだけど、多分上記の理由でおれに気を使ってもらってるんだろうなと思って言い出せない。
夜は更けていった。