じごくのもんばんを探していた。
なんてことのないその日の討伐対象を狩る日雇い労働なわけだが、これまで相当に珍奇な転職を繰り返して来たおかげか最近はそれなりに高額な上位種狩りの依頼もこなせるようにはなってきた。
しかも今回はまだ探索序盤のこの時期に25000貰えるというのはありがたい。
というわけでホイホイ請けてしまったわけだが、想像力が足らなかった。
フリーランスの基本。
ペイが高いということは、リスクも相応であるということを失念していたのだ。
居ない。とにかく影も形もない。
人気賞金首とあってそれなりの探索者が狩っている可能性もあるが、これだけ全域駆けずり回っても本当に影も形も見えやしないじごくのもんばん。
いるのはガラの悪い黒ウサギの耳ばかり。
終始ドルボードを唸らせつつ、時間を変えて何度か再挑戦。
もしかして夜にしか出ない類なんじゃないか、あるいは場所を根本的に間違えている可能性も。
そこでふと気づく。
いやまてよ。
見渡す限りの膨大な量の黒ウサギ。
これが増えすぎたせいで生態系(?)が乱れてじこくのもんばんの生息個体が減っている可能性もある。
つまり、今回のミッションは壮絶な殲滅戦になるのではないか。
現職では火力が足らないので転職。おたすけ幻魔を用心棒として荒野を進む。
見かけたウサギはすべてデストロイを合言葉に縦横無尽に駆り続ける。
相手も強敵ボーナスが入るほどの強さなので、油断してるとこっちも即死。
張り詰めた緊張感の中でバルバルに頼る血湧き肉躍る決闘。
抜きな、どっちが早いか勝負といこうぜ。
戦うのは幻魔だからどれだけ敵の先手打ってお出まし願えるかの勝負。
喚んだらあとは戦場を駆けずり回って背後から火柱立ててはMPを吸うだけのお仕事です。
その甲斐あって日暮れまでかかってやっと出て来始めたじごくのもんばん。
体感では20回に一回くらい出てきてたんじゃないか。
ウサギ増えすぎだろう。
勝った。狩った。すがすがしい空を見上げて達成感。
結局他に何もできず、膨大なウサギの躯を荒野に晒しただけでその日が終わる。
さすがになんかこう、もうちょっと人生には安らぎがあっていい。
今回の賞金もとい報酬は住居の種銭に使うことに決めた。