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この日誌は、私のコンシェルジュ「カゲむしゃ」の記憶らしいプクよ。
真偽の程は、与り知らぬプクよー。
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オルフェア住宅村にアクアが住んでいる!
そのことを知った私は、住宅村の入り口まで走ったの。
入り口の洞くつを走り抜けて、丁目案内の看板の前で、やっと我に返ったんだー。
無我夢中で来ちゃったけど、住所が分かんないや。
きっと、あのファイルに書いてあるからメモして来なきゃ。。。
上がった息を整えながら宿屋に戻る道すがら、考えたの。
私、アクアの家に行って、どうしようと思ったんだろー。
今のアクアは私のこと、知らないのに。。。
何て挨拶しようと思ったんだろー。
今のアクアとは、一度も話をしたことのない私が?
急速に高揚が治まっていくのを感じて、
たどり着いた宿屋の休憩室の床に、ペタリと座り込んだの。
休憩室に仲間たちが入ってきて、床に座った私を心配してくれたんだ。
「 何があったの? 」
心配してくれる仲間たちに、アクアのことを話したの。
故郷の村での友だちだったけど、今は別人になって旅をしているアクア。
そのアクアがコンシェルジュを募集していることが分かったの、って。
この問題はとても複雑で、身動きが取れないと思っていたんだけどね。
仲間の一人が、すごく簡単な答えをくれたんだー。
「 また一から 友だちになればいいんだよ 」
そうだ、そうだよー。
どうして思いつかなかったんだろー。
今のアクアと友だちになればいいんだ。
前のアクアがいなくっても、私は。。。
住所をメモして、夕方のお仕事までには戻るねと言って
今一度、住宅村へ向かったんだー。
家が近づくと、不安と期待が入り混じって私の足は重くなったの。
だけど、ついに家の前に着いた時の私には不調なところなんてどこもなくて、
今なら何だって出来るように思えたんだー。
パラリ。
庭で音がして。
その方向を見て。
そうして私の目に、アクアが写ったの。
アクアだ!
私は思わず草陰に隠れて、アクアを観察したんだー。
遠目の外見は、全然変わっていない。
瞳だとか表情だとかの細かい部分は、ここからじゃあ見えない。
私は息をするのも忘れるくらい、じっと見入ったの。
私は自分が動揺していることをちゃんと分かっていたし、
そういう時には良い判断が出来ないことを知っていたの。
だから、私自身をアクアに紹介するのはもう少し待った方がいいと思ったんだー。
私はそっとアクアの家を後にして、宿屋に戻ったの。
翌日も、同じように夕方の準備の前に、アクアの家へ行ったんだ。
アクアは掃除をしていたよ、すごく楽しそうな表情でねー。
少しの間、草陰からアクアの様子を眺めてから、そっと帰ったの。
数日間。
私は同じようにアクアの家に行っては、影からアクアの姿を追ったんだー。
庭の樹木にお水をあげていることもあれば、
客人たちとテーブルを囲んでいることもあったよ。
ある夜、眠れなかった私はアクアの家の前まで来たんだー。
誰もいないお庭で、今は隠れる必要がないの。
突然思い立って、私はアクアがやっていたように、この庭を掃いてみようと思ったんだ。
あぁ、何だか、しっくりするよー。
私、今、すごく馴染んでいるよー。
つづく。