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この日誌は、私のコンシェルジュ「カゲむしゃ」の記憶らしいプクよ。
真偽の程は、与り知らぬプクよー。
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個人宅コンシェルジュに申し込んでから一週間。
今日は結果が分かる日なんだー。
きっとアクアは私を選んでくれる。
鏡を見るたびに、そう思ったの。
アクアと同じ顔の「カゲむしゃ」。
アクアが私を選ばないだなんて、そんなことがあるはずないよ。
朝のお仕事が終わったら、事務局の人に呼ばれたの。
とうとう、運命の時が来たよー。
「 おめでとう 」
最初のその一言で、私のいままでの全部が全部、思い出に変わったんだー。
もう私はアクアのコンシェルジュだよ!
個人宅コンシェルジュとしての注意事項を聞いてから、制服を受け取ったの。
いつから行けるか訊かれたから、明日から行きます、って答えたよ。
明日にはアクアの前に立って、アクアと話が出来るんだ!
そんなの夢みたいだよー!
翌朝。
私は仲間たちに挨拶をしてから、宿屋を出たの。
落ち着こう、何度も自分にそう言いながら、
もう通いなれた道のりを歩いたんだー。
アクアの家の前に着いて、大きく息を吸ったの。
扉をノックして、
初めてアクアの家の中に一歩を踏み入れたんだー。
二階で音がして、階段からアクアが降りてきたの。
アクアが私を見た。
アクアは笑顔になったよ。
頭の中で何度も繰り返したシミュレーション。
アクアと対面にした時に言おうと思っていた言葉。
実際のアクアを目の前にした今、考えていたことは全部無意味になったの。
もう、関わることの出来ないはずだったアクア。
もう、私とは何の関係もなくなったはずのアクア。
もう、私を見ないはずのアクア。
何も言えずにいる私に、アクアはこういったの。
「 いらっしゃーい 」
それは魔法の言葉だったんだー。
きっと私は魔法にかかったの。
例えるなら、透明だった私に、やっと色がついたような。
透明な私には言葉を発するなんて出来ないはずなのに、魔法で声が出たの。
まるでそんな感じ。
世界宿屋協会の人たちが聞くと目くじらを立てるような速度で、
それでも私はアクアに自己紹介をしたの。
最後に名前を言ったんだー。
これからは好きなようにお呼び下さい、って付け加えて。
そうしたらね。
「 え、そのままでいいよー、いい名前だもんねー 」
その言葉はトドメで。
私はもう、ずーっとアクアについて行こうと決めたんだー。
色んなことがあったんだよー。
沢山、話をしたんだー。
アクアは大体笑ってるけど、時々怒ってて、
私もそんな時には少しむっとするの。
詳しく書いておきたいんだけど、アクアが本当に怒ってしまうと困るから、
ここまでにしておくよー。
とりとめのない日が、どのくらい過ぎたんだろー。
プクレット村を出たあの日が、すごく昔のことのようだよー。
私は今
別の世界の言葉で聞いた
リア充ではなくて
ティア充でもなくて
私は今、コンシェル充になったんだー。
おわり。