~前回までのあらすじ~
目覚めし冥王女ネル子さんは転生少女である。
彼女を転生した魔王軍残党は冥王ネルゲルの復活を企む、悪魔の秘密軍団である。
しかし、その協力を拒んだネル子はどこへとも分からず、逃げ出したのであった……!
*
暗闇の中、謎の禍々しい声が交差する。
「なにぃ? 逃げられただとぅ?」
「どうやら説得に応じなかったようで」
「ふざけるな! なぜ初めから洗脳術法を掛けなかったのか!」
「さぁ、それは分かりません。世話役は悪魔神官のヤツに任せておりましたので」
「あの間抜けめっ! ……それで、あの小娘は、どこにいる?」
「宮殿中層あたりを、さまよっているようです」
「捕らえろ! そして痛めつけてその身に分からせるのだ!」
*
ネル子の こうげき!
かいしんの いちげき!
サタンメイルを やっつけた!
「はぁはぁ……、もぉ。なんなの、ここ。ちょっとは、休ませてよぉ……」
ネル子はひとり、さまよい、戦い続けていた。
と、
「ぎぃー、逃がすなぎぃー!」
マポレーナたちが群れを成して飛び掛かって来た!
素早くネル子は手にした鎌の鎖分銅(※くさりの先に付いた鉄のおもり部分)を投げつけ、一匹を捕らえる。
「ぎぃッ!?」
一匹に鎖が巻き付いた状態でそのまま振り回す。
「ぅおぉりゃあああぁぁぁッ!」
大・回・転!
残りのマポレーナたちを蹴散らした。
「目が、回る~ぅ……」
ばったり!
その場で大の字になって倒れたネル子。
眩暈と疲労でしばらく起き上がれそうになかった。
次から次へと襲い掛かって来る魔物たち。
否応なしにネル子は戦闘を強いられた。
「でもなんだろう、このチカラ……すごい……、あたし、戦えてる……!」
寝転がったまま、つぶやいてみた。
エルフで生きていたこれまでは、一度も戦ったことなんてなかったのに。
まるで身体が戦い方を知っているみたいだ。これが、刈り取る者の、冥王のチカラなのか。
「さて、と。そろそろ起きなくちゃ。また魔物たちが来るかもだし……」
ネル子は朽ち果てた城の中に居た。
かなり広大で迷路のような作りになっている。所々、天井や壁、柱などが崩れていて、先に進めず、その度にさらに迷い、戦いを繰り返していた。
「今度はどっちに行こうかなぁ……」
と、
「どこへ行くと言うのだ、ネル子よ」
通路の先、何者かが待ち構えていた。
「誰、アンタ? 邪魔するンなら、よーしゃしないよ?」
こちらへと近づいて来るそれは――、
「プリーストナイトが あらわれた!」
「……あれ、なんだろうこの感じ、デジャヴュかな?」
と、言いつつも、ネル子は若干たじろいだ。
明らかに下級モンスターとは違う、その風貌。それが――、
「容赦しないのはこちらのほうだ」「随分暴れてくれたな、ネル子よ」「目覚めたばかりの赤子とは言え、躾は必要なようだ」
「追加で三体もッ⁉」
これにはネル子もビックリだ。
「エビルソーサラーが あらわれた!」
「サイコマスターが あらわれた!」
「カーディナルナイトが あらわれた!」
これで合計四体。どれもこれも上級悪魔がここに揃った。
「……でもやっぱ、自分らで名乗ってくれるんだね」
ネル子は隙をうかがっている。どうにかして逃げ出せないものか。
「さて、我ら仮面の魔法騎士団が、貴様に教育的指導をしてやろう」
奴らが手にした大剣がギラリ、不気味な光を放った。
「く……ッ、いいよ! 来なよ! やってやる! たかが色違い四体、この冥王女ネル子が刈り取ってやるかんねッ!」
決死の表情でネル子は身構えた。
ネル子の こうげき……!
つづく。
※この物語はフィクションです。