~前回までのあらすじ~
目覚めし冥王女ネル子さんは転生少女である。
冥王ネルゲル復活その協力を拒み、魔王軍残党幹部・仮面の魔法騎士団から瀕死の重傷を負わされたネル子。
しかし洗脳される寸前、なんと悪魔神官の手によってネル子は脱出するのであった……!
木漏れ日が眩しかった。
そよ風で頬がくすぐったくなった。遠くからは小鳥のさえずりが心地よく響いている。鼻をすすれば土と野草の匂いが懐かしかった。
「ここは……森の中? あたし……何を?」
少女は目を覚ました。
もうどれくらい眠っていたのだろうか。
なんだかずいぶんと長い間、ずっと悪い夢を見ていた気がする。
柔らかな草木の上でごろん、少女は寝転がって空を見上げた。
背の高い木々のずっと向こうにちらちら、太陽が枝葉に見え隠れしていた。
何もかもが懐かしい。エルフの大好きな風と緑のニオイ。自然の恵みを少女は全身で受け取っていた。
「でも、変な夢だったなぁ~」
まさか、自分が死んでしまう夢なんて。だけど、生まれ変われるチャンスがあって、でも何故か、冥王のチカラなんて受け継いじゃったりして、
「ん? 冥王…………刈り取る者…………ここは森…………森林…………刈り取る…………しんりんばっさい?」
何かがネル子の脳裏を駆け抜ける!
「伐採マシンになるのは嫌ああああッ!」
ネル子は飛び起きた。
「はッ⁉ あたしは…………ネル子?」
その腕には、じゃらじゃら巻き付く、
「うぅぅ……、くさりがまぁ!」
やはり夢ではなかったようだ。
突然の死、冥王に転生、迷宮からの脱出。これまでの全てを、ネル子は思い出していた。
「あれ? でも……どうしてこんな所に?」
周りを見渡すネル子。
樹林の中で天にも届くほど一際巨大な幹を持つ木が見える。
見覚えがあるはずだ。あれは世界樹、ということは、
「あたし、戻って来れたんだ……」
ここはツスクルの村はずれ、久遠の森の中だった。
ツスクルはエルフ族の生まれ故郷だ。
懐かしさを感じる理由を理解するネル子。
「帰ろう、学びの庭へ」
ネル子に転生する前、自分はそこで学び暮らしていたはずだ。
走り出す、ネル子。
あそこなら、何か手掛かりがあるかもしれない。
もしかしたら、元の姿へ戻る方法も分かるかもしれない、と。
「うわぁーッ!」
突然の悲鳴にネル子は足を止めた。
そう遠くない場所からのようだ。
ただならぬ気配に一瞬迷ったネル子だが、声のする方へ踵を返した。
つづく!
※この物語はフィクションです。