ウェディの若者は苦戦していた。
傷つきながらも剣を構え、男らしく巨体と対峙している。
後ろにはエルフの女のコ。まだ幼く、この状況に怯え、頭を抱えて震えている。
若者は彼女をかばう様に立ちはだかっていたが、深手を負ったのか、片膝を着いて相手を睨むのみ。
「く……っ、こんなところになぜ、ベリアルが……ッ?」
「ぐふふふ、ただ偵察するのも飽きてきたしな~ぁ。ちょうど腹が減っていたところだ。よし、決めたぞ。お前らを食ってやろうか!」
「ちっ、ここまでか……。すまない、君だけでも、逃げるんだ……!」
ウェディの若者は呻いた。
「ぐははは、このワシから逃げられるとでも思うのか!」
迫り来る悪魔、ベリアル。
「いやーぁ! だれかたすけてーぇッ!」
堪らず泣き叫ぶエルフの幼女。
と、そこへ。
漆黒の外套を翻し、双角に陽を浴びて、ひとつの影が飛び出した。
纏うは暗闇、心は正義、今、颯爽と舞い降りる!
刈り取れ! ネル子さ――、
「おいしくないですからぁ! エルフは、おいしくないですからぁ!」
わめき出したエルフ幼女。
「……あっれぇ~?」
ネル子は完全にタイミングを逃した!
「こんちゅうのあじ、だからぁ! きっと、セミとおんなじあじがするからぁ!」
わめきつづける幼女。てか、セミと一緒って。あれか? 薄っぺらい羽根が付いているからか?
「このひと! このひとのほーが、おいしいですからぁ!」
なんと!
ようじょは ウェディ男を ゆびさした!
「うおおををぉッ! 俺ぇぇえええッ?」
ウェディの若者はビックリだ!
「にてよし、やいてよし、うぇでぃは、いそのかほり、おさかなのあじ、ですからぁあああッ!」
なんと!
ようじょは こんらんしている!
「さぁさぁ、そのふぉーく、みてぇので、ぶっすりと、さぁ! たたきもおっけー、さぁさぁ!」
「ちょ……、押すな……、バカやめぇ……ぐぇっ!」
ようじょは ウェディ男の せなかを
ぐいぐい おしている!
「う~ん。ワシ、魚料理苦手なのよねー、出来ればお肉がええな~ぁ」
ウェディ男くんの顔面がベリアルのお腹に引っ付いて、ぶにぶにっとなった頃、
「や……、やめなさぁ~~~いッ!!!」
ネル子、絶叫す。
「おねぇちゃんだぁれ……?」
幼女は押す手を止めた。
「く……ッ、新手の魔族か……ッ?」
ウェディの若者はやっと解放されたが、もはや瀕死の状態である。
しかし!
おいうちを かけたのは ようじょだ!
気を取り直して。
「そのヒトたちを放しなよ! でないと、あたしが、刈り取っちゃうかんね!」
ネル子は キメた!
つづく!
※この物語はフィクションです。