勝負は負けたら終わりなのではない。
辞めたら終わりなのだ。
私の名はあずきあらい。自称サソリの教官である。今宵も我が門下生達の指導の為に、サソリ浮き輪に生命を吹き込む。教官たる者、先ずは格好からビシッと入らなけれは威厳が保てない、威信を守れない。目を瞑れば初めてこの浮き輪を目にした門下生達の尊敬の眼差しが思い出される。浮き輪の似合う大人になりたい…そんな心の声が聴こえてくるよ。
成功する方法は、たった一つだ。
成功するまで、失敗し続けることだ。
「本当にすまないと思う」こう呟く男がいる。門下生ライバツク。
連戦連敗が続く中、全面的に己の非を認め真っ直ぐに誠意を持って発せられる重みのある一言。言葉は波動を持つ言霊となる。そこに言い訳等無用、全ての責任は我にあり。この時代であっても武士道を全うする男。
多くの人は武士気質の人格者としてこの男を真の漢と認めるだろう。
けれどもどうしてだろうか…私はどうにも腑に落ち無い。
上手く飲み込めない。
熱波を全身に浴び
「本当にすまないと思う」
絶からの蘇生帰還した後
「本当にすまないと思う」
魔蝕で混乱しながらも
「本当にすまないと思う」
円陣殺から軽くはみ出ては
「本当にすまないと思う」
覇軍ですっ転びながら
「本当にすまないと思う」
否…疑ってはいけない。
成功の9割は信じる事から始まるのだ。
そんな事を考えながら私は今宵も安い赤花で染めた紅マスクを装着するのであった。
この日記は下記の作品のスピンオフ企画となっております。是非本編をお楽しみください。
https://hiroba.dqx.jp/sc/diary/75089955499/view/6300726/