※本件、Ver4.0およびそれ以前のネタバレを含む可能性があります。
閲覧の際はご注意ください。
りゅうせき 「…む」
シンイ 『目を覚まされましたね』
ピコン 『大丈夫なの?』
気が付くと、先程まで戦っていたたくさんの人達が
私を心配そうに見ていた。
回らない頭を無理やり働かせ、私は口を開いた。
り 「…冷静に考えると私が大丈夫なのはおかしいと思うのだが
関節が固まっている以外は、無事だ」
ピ 『関節?』
り 「うむ、指一本動かぬ」
全身の関節が、ガチガチに固まっていた。
ギリギリ喋れるが、顎も例外ではない。
シ 『全身骨折を無理やり治療したようですね。いったい誰が…?』
り 「その辺は後で整理しよう」
コミュニケーションウィンドウで日時を確認した私は、議論を遮った。
今する話ではないと直感的に思ったのと
何より今、私自身がそれどころではないことに気付いた。
り 「リハビリしつつ現状確認が先だ。んで、その前にまず…」
「…パンツを調達したいと思うのだが、どなたか
ご協力いただけないだろうか?」
――――――私の装備はどうやら
パンツ諸共消し飛んでしまったようだ。
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エテーネ王宮動力炉を誤爆してしまった我々は
何がどうなったのか、キィンベルの北
ティプローネ高地の一角に倒れていたという。
最後の戦いにてリーダー格だった看守のカートによると
負傷兵や一般民は転送装置の再起動を終えた段階で
既にキィンベルへの避難を終えており
王宮に残っていたのはあの場にいた者たちだけだったという。
負傷はそこそこあったものの、国王以外は生存が確認された。
り 「王様はいくえ不明なのか」
カ 『陛下だけがどうにかなったとは考えにくいが…』
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暫くすると、キィンベルから王国軍の伝令が駆け込んできた。
―――パンツを握りしめて。
話によれば、ティプローネ高地へ降下していった筈の王宮が
王国軍区画ギリギリの高度に出現し
中から国王が現れて、威厳のある声でこう言ったという。
『・ティプローネ高地D-4地点に負傷者がいるので救助すること
⇒それにあたり、パンツを一枚持参すること
・流赤の公然自爆罪は現実となってしまったが
余にも原因があるのと、一応全員無事なので不問とする
・余はこれから王宮とともに暫く留守にする
⇒現状の指針書を参考に、皆今を大切に生きること』
ピ 「箇条書きだったの?」
* 『あぁ、それはもう見事なまでに。陛下はそう言い残すと
王宮ごとどこかへ消えてしまった。
…ところで流赤さんよ、履きにくいのだったら
私が履かせてやろうか?』
り 「皆いる場所で赤ちゃんプレイとかNo thank you.
というかおまいさん、それ言うためだけにこの役買っただろ」
まだ硬さの残る関節を無理やり曲げ
私は半ば強引にパンツをはいた。
――――目の前でニヤニヤしている伝令は
かつて私にパンツを破壊された、黒服軍帽のベルマさんだった。
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そこから半日ほど歩いて、夕刻にはキィンベルに到着した。
途中何度か魔物に追い回されたが
返って体を動かす機会が増え、到着するころには
関節も大分動くようになった。
キィンベルの町は、国王のフォローがあったおかげか
騒動の後を感じさせない、いつもの穏やかな空気にあった。
到着後に門番から直近の情報が共有された。
国王が去ったあと、王国軍区画へ避難していた王家の人間が
国王を追って姿を消したという。
国政は暫くの間、王家家臣と王国軍に委ねられることとなった。
シ 『急な話な上に事情がよく呑み込めませんね』
り 「その辺、何かわかることがあるかもしれないぞ」
シ 『…と、いうと?』
り 「…私の知らない間に日誌の更新があってな」
ピ 『パンイチで真顔になってないで、さっさと宿とるわよ』
り 「…締まらんのぅ」